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ゴルフプラネット 第42巻

【第3回】7000ヤード

2016.10.24 | 篠原嗣典

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7000ヤード

 

「あのコースは7000ヤード以上あるからチャンピオンコースだよね」というようなことをいう人がいる。

 

 何度も書いているが、チャンピオンコースというのは、本来、全英オープンを開催したことがあるコースに与えられる名誉であり、総距離とは無関係である。海を渡って、米国では全米オープン開催コースにメジャー開催コースまで範囲を広げて使われるようになった。

 

 日本では単なる宣伝文句としてチャンピオンコースという言葉が使われている。昨年も、高名なゴルフ関係者が、トーナメントを開催したことがあるコースがチャンピオンコースだと話していて、愕然とした。

 

 そんなことだから、一般の人が7000ヤード以上の総距離があるコースをチャンピオンコースの基準だと思ってしまうのは仕方がないことなのかもしれないが、この手の知識は修正の機会を逃さないことが大事である。元々の意味を知り、日本に当てはめるなら日本オープン開催コースとするか、残念ながら日本には該当するコースがないというのが正しいと覚えておきたい。

 

 トーナメントを開催していたコースでプレーしたときのこと。同伴競技者の1人は初対面で、ゴルフ歴25年、ゴルフ大好き、ゴルフに詳しいと自己紹介する同世代のフリークだった。私は絶好調で、パープレーに2打足りないだけのプレーだった。

 

 一応、フルバックでやったので総距離は7000ヤードを越していて、パー4の7割が400ヤードを越えていた。確かにプレーしていて『長い』という印象を持ったが、難しいとは思わなかった。

 

 初対面の同伴競技者は、ゴルフ歴の四半世紀、一緒にプレーした中で一番上手い人だ、と途中から私にベッタリ付いてくるようになった。

 

 プレー後、お茶をしながら少し話をしたときに、先程のチャンピオンコースの話になった。そのコースはトーナメントを開催していたコースで、誤解の中でも割とまともな意味で誤用して使っているのかと思いつつ、正しい由来などを説明した。彼は7000ヤード以上のコースのことだと思っていた、と知識の更新をする機会が来たことを嬉しがっていた。

 

 話は総距離が長いコースの難易度になった。そのコースにかんしていえば、総距離は長いが幅が広いホールが多く、ドライバーを思い切って振れるので長さが気にならなかった、と自らの感想を言った。6500ヤード以下で、パー4が400ヤード以上のホールがないコースでも、左右OBばかりの狭いコースのほうが、個人的には何倍も難しいし、攻略した感も大きい。

 

 長さは難易度に直結するということを否定はしない。でも、それだけではないことも事実である。

 

 7000ヤード以上あるコースにこだわる人は多いが、底の浅さを公言するような愚行である。それは、8番アイアンは160ヤード飛ばなければ駄目、というような番手自慢と同じ線上にあることは、少し考えればわかる。

 

 少し深い話を書けば、セオリーを重んじるコース設計家がデザインした長いホールは概して大味だという特徴があることを理解していれば、総距離絶対主義にはならないものなのだ。これは、長さで難易度を高めているので、戦略上の工夫を詰め込む必要がないからで、料理でいえば素材で勝負するホールになるからである。良い素材を必要以上にいじくって駄目にしてしまうのは、幼稚な虚栄心が産む失敗の代表である。

 

 大味なホールが嫌いなわけではなく、そういうホールが続くのは面白みに欠けると思うだけのことだ。

 

 私が好きなコース設計者は、例外なく料理人としての腕が良い。素材に難があるほど、その腕を奮って美味しい料理にするし、18ホールの本格的なコース料理を用意してくれる。色々なホールがバランス良く配置されたコースを設計するのは、案外と難しいのである。

 

 豪快なゴルフとはずいぶん長い間ご無沙汰していたが、その日は、久しぶりにドライバーを振り回して楽しんだ。大味で単調だと指摘しながらも、そういう単純さも面白いからゴルフは罪な奴である。

(2010年1月27日)

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