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ゴルフプラネット 第42巻

【第1回】まえがき/練習グリーンの疑惑

2016.10.14 | 篠原嗣典

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まえがき

 

 42巻は2010年にゴルフコースをテーマで書いたものをまとめたものです。

 

 ゴルフコースに絶対に必要なものはいくつかありますが、グリーンはその代表です。2010年はグリーンの話が何度も出てきます。

 グリーンのメンテナンスは年々向上していますが、2010年頃から急激に情報交換が進んだ気がします。一つには、コースを現場で評価する際に、グリーンは誰でも体感できる唯一のもので、リピーター率を上げる様子になっていることに気が付いたということもあります。

 グリーンについての話は、現在でも十分に通じる内容で、パットが上手くなるような気になれると思います。

 

 ブログを通して、専門的な知識を持った人たちにアドバイスをもらいだしたのもこの年です。

 桜を始めとした植物の話。鳥の話。知らなかったことを知るのは快感です。42巻には、そう言う話も出てきます。

 

 ゴルフを楽しむ方法は無限で、ゴルファーの数以上にあるとハッキリと自覚したのはこの頃です。それが、最もわかりやすいのはゴルフコースを楽しむことなのです。

 ただボールだけを追って、クラブを振り回すだけが、ゴルフではないのだと微笑むゴルファーになるために、この本は存在するのです。

(2014年5月)

 

練習グリーンの疑惑

 

 最近、私は全く練習グリーンを使わないことがある。読者を始め、あらゆる人に、練習グリーンを使い切ってこそ、パット名人になれると説いているのに、である。

 

 20年前までは、練習グリーンを芝刈り機で刈るのは最後というコースが普通だった。コース管理の人たちは、いくつかに分かれてグリーンを刈っていく。スタートに合わせて、スタートホールから順に進めていけば、最後の最後は練習グリーンになるからだ。

 

 グリーンの状態の良さが、客の再来場率を上げる要素として重要だということが実体験としてわかり始めてきたことと、業界の再編が進みグリーンの管理技術の情報交換が盛んになったことが重なって、この10年では常識が変わってきている。

 

 最近の傾向として、練習グリーンを最初に刈るコースが増えてきたことが挙げられる。これは練習グリーンをどのように捉えるのか、という考え方が形になったものだといえる。

 

 元々は、練習グリーンは単なるサービスだったのだろう。私がゴルフを始めたばかりの頃には、コース内のグリーンとは全く違う芝種だったり、速さが全く違う練習グリーンは珍しくなかった。練習グリーンに注ぐエネルギーがあったらコース内のグリーンに注げ、という風潮もあったのだと思う。

 

 練習グリーンは、コース内と同じコンディションにあるべきだと盛んに主張したのは、ジャック・ニクラウスである。また、ホール毎にグリーンコンディションが出来るだけ同じようにするということもニクラウスの信念である。世界中で最も多くのコースを設計していると言われているニクラウスの考え方は、そのまま現代ゴルフコースの管理法として浸透した。

 

 練習グリーンのメンテナンスを良くすることは、徐々に広まった。相乗効果があったからだ。グリーンの速さを語られるシーンが最も多いのが、練習グリーンだからだ。多くの人が集い、他人の目を意識してグリーンを評する言葉も飛び交う。練習グリーンで高評価を受ければ、それは自然と広まるし、実際、プレー中にグリーンのコンディションを冷静に判断出来る人は少数であり、多くの人の印象は練習グリーンのままで変わらない。

 

 練習グリーンのメンテナンスを良くすることは、全体の印象を上げる。ボールマークはなく、出入りのコントロールもしやすいので、練習グリーンの管理はコース内のグリーンより楽である。管理の良い練習グリーンでパットができることは、コース内の準備として有効なだけにとどまらず、オマケとは思えないほど嬉しいし、身になる時間を過ごす幸せも味わえる。

 

 良い傾向のはずだったが……

 

 最近になって、おかしなことが起きているような気がする。

 

 明らかに練習グリーンだけが気合いを入れてメンテナンスされていて、コース内のグリーンは各段に落ちるということがあるのだ。コース全体を底上げするより、費用面から見ても、労力を考えても遥かに面積が小さい練習グリーンを優先させる方が簡単である。とは言え、本末転倒である。

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