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ゴルフプラネット 第41巻

【第3回】差別

2016.10.24 | 篠原嗣典

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差別

 

「おじいさまの遺産で暮らしているんですよね?」

 

 先日、私の仕事についての話になったときに聞かれた。

 

 とても魅力的な話であるが、もちろん、そんなことは一切ない。ゴルフへの道筋という意味では祖父の影響は大きいので、強いて言えば、それは遺産かもしれないが、それだけで生活できるわけはない。

 

 誤解を解くために説明をした。ゴルフをよく一緒にする先輩の奥様の紹介だったが、その奥様は逆に私が普通に仕事をしているのだということに驚いていた。育ちが良く見えるから、というのは誉め言葉だろうから素直に喜んだ。

 

 ゴルフ場に仕事を持ち込まないようにしているので、私のゴルフ仲間の周囲ではこう言う話がよくある。かなり親しくしているゴルフ仲間でも、何の仕事をしているのかを全く知らない人が何人もいる。

 

 以前、同じようなことを書いたときに、ある読者からメールが来て、『誰とでもゴルフをするというのは無責任だ』と叱られた。誤解がある。誰とでもゴルフをするのではなく、ゴルファーとしてお互いを認めあえるのであれば、その人の職業で差別をしない、というのが私の持論である。

 

 泥棒のような犯罪者だろうとヤクザだろうが、ゴルファーとして真剣に楽しくプレーできる人とであれば、私はゴルフをする。経験からいえば、問題がある人生を送っている人はゴルファーのフリはできても、ゴルファーにはなりきれないものだ。

 

 例えば、昨年、中学生になる子供が万引きで複数捕まって、学校やらなんやらで大変だという話をしていた人がいる。その人との付き合いは10年近くなるが、間違ってもゴルファーとは言えない人である。その人の友人が尊敬できるゴルファーである関係で付き合いがあるだけで、私個人との繋がりはない。私はそういうケースで、知り合いとは呼ぶが、ゴルフ仲間とは決して呼ばない。

 

 その人は、小さな違反をしょっちゅうしている人だ。大叩きすれば、1~2打ぐらいは少なく申告するし、勝手なルール解釈でボールを自分に有利なところに動かす。その都度、注意されると「うっかりしていた」と悪気なく笑顔で謝る。

 

 ゴルフ仲間の1人は、親が親だから子供が万引きを繰り返すのだ、と本人に聞こえるような大きな声で言った。その場にいた人は、大なり小なりそう思っていたような気がする。

 

 職業を確認せずとも、ゴルフを一緒にすれば、その後も付き合っていくべきかどうか、自然とわかるというものだ。

 

 差別はするのもされるのもイヤなものである。人を差別する人は、必ず差別もされているものだ。

 

「c-noさんは特別で、ゴルファーであることが確認できない人のほうが多いんですよ」という人がいる。現実として、それは理解している。ただ、注意しなければならないのは、ゴルファーはゴルファーを知る、ということだ。裏を返せば、ゴルファーを確認できない人は、かなりの確率でゴルファーとして致命的に欠落しているのである。

 

 自分の未熟を棚に上げて、わかりやすい基準として職業差別をゴルフコースに持ち込むのは恥ずかしいことだ。

 

 人それぞれに事情があって、仕事でゴルフをしている人もいるし、職業を無視した人間関係でゴルフをするしかない人もいる。それはそれで有りである。ゴルフの良い所は、自分が審判であり、他人の審判ではないことだ。

 

 自らの信念を貫くことがゴルファーとして重要であって、それを他人が実践するかしないかは重要ではない。

 

 ゴルファーであれば一切の差別はしない。それは、実は外側に向かって発信されるのではなく、自分に向いて発せられている。差別と無縁に気楽に過ごすために、ゴルファーであろうという努力をすれば良い、ということだからである。

 

 ゴルファーというのは面白いもので、なれない人にとっては、永遠の憧れのような遠い存在であり、しっかりと実践できている人には、壁にもならない簡単な枠組みに過ぎない。

 

 ゴルファーは世界共通の概念である。しっかりと身に付けておけば、言葉は通じなくともゴルフを一緒にすることができる。誰とでもゴルフをするということは、つまりはそのような線上にあるのである。職業どころか、住んでいる国、人種、言語を越えてゴルファーはゴルファーを結びつける。

 

 単なる娯楽としてゴルフをしている人は損をしている。お節介だろうけど、もっと楽しく、かつ、可能性を広げることが出来る入口がゴルファーになることなのである。

(2010年1月26日)

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