【第3回】負けるが勝ち | マイナビブックス

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ゴルフプラネット 第40巻

【第3回】負けるが勝ち

2017.03.30 | 篠原嗣典

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負けるが勝ち

 

 ドライバーで放たれたボールが青空の中に消えていく。球技の中でも最もボールを飛ばすことが出来るだろうゴルフの魅力の要素として、ドライバーは不動の地位を維持している。

 

 スコアなんて関係ない! とドライバー命の人もいる。ゴルフの楽しみ方は、人に迷惑をかけない限り自由である。それもまた道である。

 

 方向と距離のどちらかを取るかというゴルフ談義は、色々なレベルで楽しめるテーマの一つであるが、レベルだけでなく、目的によって正解が違うところが面白い。

 

 先程の例は極端なので別として、多くのゴルファーはスコアを優先してゴルフをしている。その場合、優先するのは方向である。理由は簡単で、方向は簡単にゼロになるが、距離はゼロにはならないからだ。

 

 詳しく書くと、どんなに方向に注意して、最優先しても、飛ばなくなるとは言っても距離が半分になったりはしないのに比べて、距離を優先して振り回せば、その瞬間に方向は無視されて、ボールはどこに飛んでいくかわからなくなるからだ。ゴルフがターゲットを丁寧に狙って、駒を進めるようにするゲームである限り、ウサギとカメの例を出すまでもなく、スタートダッシュである距離より、着実に前進をし続けるような方向重視が勝つ。

 

 もちろん、最低限の飛距離は目標別にあるので、必要最低限の距離はなければならないケースもあるし、トップレベルのゴルフでも、飛ばそうとしてある程度の距離を打てなければ目標は幻想になってこともあるので、それが全てだとは言わない。

 

 同様なことは過去の誌面でも、CD-Rでも言い続けてきたし、ゴルフの定石でもあるが、30歳になったばかりの知り合いから「それでも、距離あってのゴルフだと思うんですよ」と反論された。

 

 話を聞いてみると、彼の先輩たちはみんな彼よりも飛距離が出て、「若いのに飛ばない」「だらしないねぇ」とかからかわれるので、ついつい力が入って、いつもガタガタになってしまうのだという。よくある話である。

 

 彼の結論は、男は黙って振り回す! だという。私は結論が出ているのなら、それで良いのだと本気で肯定した。強い意志には、定石なんて吹っ飛ばす力があることがゴルフではあるからだ。

 

 彼に頑張りなよ、と言いつつ、私は別のことを思っていた。私が現役の競技ゴルファーだった頃、飛ばしにこだわっている人の多くは中年以降の競技ゴルファーだった。その年代になった現在、その気持ちはわかる。老いが距離不足になってゴルフに出ることは、悲しさを通り越して震えるほどの恐怖があるからだ。それに打ち勝とうという闘志は、こだわりになっていく。

 

 全国レベルの試合になると、自分より飛ぶおじさんたちとプレーすることはよくあった。年齢を題材にして挑発されることもあった。

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