まえがき
2009年に書かれたものをまとめたのが40巻です。
電子書籍のゴルフプラネットも、とうとう40巻となりました。
前年の秋のリーマン・ショックの影響は、2009年になって日本のゴルフ業界を直撃します。大きな予算が必要な計画は軒並み消滅してしまいました。
そういう中で、高速道路が土日祝日が千円になって、遠くのコースまで足を伸ばそうかという景気の良い話題もありました。
2016年のリオ・オリンピックでゴルフが種目として復活するという嬉しいニュースもありました。
あまり表面化しませんでしたが、裏側まで見れば、大変な1年でした。
ゴルファーとして、新しい視点を持ったのがこの年でした。
非常に抽象的ですけど、山桜が咲くゴルフコースに感動したりするようになったのです。違いがわかるゴルファーは言いすぎですけど、自分の中で価値観の変化がありました。
ゴルファーの数だけゴルフの面白さは用意されています。それだけでも十分に感謝すべきことなのですけど、それに気が付かないから色々な不幸な出来事が起きるのです。
自分が面白いと感じるゴルフを追求できることは幸せです。
読むゴルフは、そういう人には欠かせないものなのです。
(2014年3月)
イイ夢見ろよ
ゴルフ仲間の忘年会で盛り上がったのが、ゴルフコースを買うという話題だった。
金融危機で、落ち着いていたかに見える日本のゴルフ場業界が、にわかに騒がしくなってきている。既に約束を守らない一部の外資は、株主に対する責任で利益を出すためだと採算の合わないゴルフコースを転売し始めている。
ゴルフコースのオーナーになるチャンスと考えれば、不況も悪くはないと大いに盛り上がったのである。
実際に、諸々の問題も一緒に買う条件を飲めば、数千万円でゴルフコースオーナーの道は開ける。ゴルフコースで儲けようという馬鹿な野望を持たなければ、ゴルフコースのオーナーは楽しいはずである。
エンターテイメント系の企業は、不況に強い。何もすることがなくなった人は、地道に自らを高めたりはしないものだ。暇をつぶすために、大人が考えることはパチンコなどの遊技というわけだ。
私はパチンコをしないのでよくわからないのだが、パチンコをする人に言わせれば、暇をつぶすことができて、時々お金にもなるという遊びは他に代わりがないそうだ。ゴルフはお金を払うだけだから、とゴルフよりパチンコを上に見る人すらいる。
エンターテイメント系の企業がオーナーのコースは、優先順位の高い位置にお客さんが喜んでくれることを掲げていて、実際に不愉快なものやサービスに関しては、見事に素早い対処で心地良い空間作りをしている。それでいて大々的な宣伝をせず、口コミを大事にしているので、コースによっては隠れ家的な良いムードを醸し出してさえいる。
小金を持っている人ゴルフ好きが集まって、ゴルフ場のオーナーになっているケースはいくつもある。投資した分を回収しようとして、会員を募って、合議制にしたことでつまらない普通のコースになってしまった失敗例もある。ロマンをもって運営することは難しいのも事実である。
どうせするなら、エンターテイメント系の企業のようにイイ感じの運営が出来れば面白いという話で盛り上がった。
一人がお金を出すのではなく、強いて数人で割って負担したほうが安心だという現実的な話が出たら、お金を出せない分、仕事を辞めて支配人をするとか、キャディーマスターをするとか、乗りの良い提案もあったりした。
そこにいた仲間は、どこかで夢の話だと思いつつ、実現したらと考えられる現実の範囲内にある話でもあることを楽しんだ。
自分たちのコースであれば、どんな僻地にあっても、アップダウンがきつくてトリッキーなレイアウトでも、良いよね…… と一人が言った。ボールが打てれば、それだけで良いよなぁ、と別の一人が言った。
良い仲間だなぁ、と私はしみじみとした。
元々、仲間だけでプレーをしたい、気の合わない奴と一緒にプレーしたくないという願望がプライベートコースを生んだ歴史がある。日本では、土地に対する考えの違いや山ばかりの国土という背景があり、同じようなスケールで発展はしなかったが… 仲間だけで楽しめるコースがあるのは良いなぁ、と思った。
年が明けて、初夢でいくつかのゴルフコースの共同オーナー制を提案して奔走している自分を見た。
ゴルフコースのオーナーになるのはリスクもある。だから、隔週で使用権を譲り合う共同オーナー制を作ったようだった。リスクを分散する代わりに、オーナーとしてやりたいことを実現させることは出来るのだから、受けないわけがなかったが、色々と調整は大変だという夢だった。
更に細かく割って、時間貸しのような仕組みも作れるなぁ、と目が覚めてから考えた。
実現したい夢は人に語ってはいけないという説もあるけど…… なんだかイイ夢を見たなぁ、と思って紹介したくなったのだ。
ゴルフ場で王様のように振る舞いたいのであれば、王様になれば良い。私が言うオーナーと王様は違う。訪れた人たちが全て、笑顔で楽しい時間を過ごせる空間を作ることを快感だと思えなければオーナーにはならない方が良い。
何よりゴルフが好きで好きでたまらない人でなければ、話は進まないだろうなぁ、と思った。そういう人たちに囲まれて、幸せに暮らせたらゴルファーとして最高である。
(2009年1月9日)