午後、友作は前から会う約束をしていた者と会うために、季範のタクシーで川越市に向かった。途中、川越の「庵寿」と言う所で昼食にした。茶そばを友作は注文し、季範はそば稲荷を注文した。
「え、それだけでいいの?」
と友作は季範に言った。
「ハングリー精神だ!」
季範はそう言って笑った。友作は昨日の事を話し始めた。
「謎の刑事って誰だろう? 本当に気になるなぁ」
友作が言ったので、季範は「さぁ?」と返した。
「でも、どんな人か見たんでしょう?」
「人が多かったし、暗くてぜんぜん分からなかったぞ」
季範はそう言って天井を見上げる。
「お待たせしました」
「お、ありがとう」
季範はそう言うと、そば稲荷を食べた。友作も「いただきます!」と言って、茶そばを食べ始めた。ちゅるちゅると喉に入ってゆく。微かに茶の香りがした。
「美味しい!」
友作が微笑む。季範も笑った。
昼食を取り終えた後、季範は友作を川越市役所まで送った。友作は車を降りると、四階の市長室に向かった。市長室の前で身長百九十センチ位の三十代前半の男が友作の姿に気付いて手を振る。