両親がこの旅に一番期待していたこと、それは、妹が自分に自信をつけ、人生をもっともっと楽しめる子になって欲しいということだったと思います。
妹には一時、抜毛症の症状が見られました。抜毛症とは、ストレスが原因で、無意識のうちに手が頭髪に伸び、髪を抜いてしまうというようなものです。両親としてみれば、心配で、どうしたらいいか分からずにいたのではないかと思います。ストレスを与えないようにと口を出さなければ、宿題をやらないし、声をかけずそのまま学校へ行かせれば、宿題をやるようにと学校から連絡がくるというような状態であったと聞いていますから、やるのが当たり前の宿題一つでも、声のかけ方や対応に悩んだことは間違いないと思います。幸いにも、妹の症状は徐々に和らぎ、旅に出る頃にはすっかりおさまっていましたが、この世界一周は、そうした妹に何かきっかけを与えるチャンスだと、両親も私も思っていたのでした。
私は、妹にきっかけを与える大役として大抜擢されたわけです。
私は、妹がちょっとでも自分を好きになれるように、きっかけを与えようと思いました。
ほんの少しでも今より大きな夢を描けるように、きっかけを与えたいと思いました。
主役としての自覚を持って、自分の人生を生きて欲しいという妹への期待を胸に秘め、私は旅に立ったのでした。