バブルの崩壊〔平成時代〕(2)
ジッちゃんはえらい物識りだった。とくに得意の分野は江戸末期の剣豪たちの話で、そのあたりに至ると尽きることがない。そうした話をしたい時は、ボックスの指定席からカウンターの指定席へとお直りをして喋り出すのが常だった。そうした世界に疎いわたしは、唯々うなずいて聞き役に徹する外はない。といって、うんざりした表情を絶対見せるわけにもいかず、また聞きっぱなしもまずい。時折、それなりの感想も入れなくては礼を失するわけだ。ここが神経のつかうところで、これはジッちゃんだけのことでなく、例外はあるもののお客さん共通の現象だ。