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野崎先生は、忠が中学在学時には若い先生に分類されたが、定年になって、もう、数年が経ったという。
いわゆる団塊の世代で、学生運動が敗北感を持ちながら急速に下火になっていく中で大学生活を送ったと授業が脱線したときに聞いた記憶があった。
中学時代、忠は優等生だった。先生に何でも従っていたわけではないが、意味なく反発するより、大人として付き合う努力が大切だと考えていた。そういうことを面白がってくれる先生には、かわいがられた。
野崎先生にも良くしてもらって、色々な話を聞かせてくれた。
高校時代から学生運動に参加していたのに、あっという間に価値観が変わっていき、無感動な時代になっていったという話は、何度も聞かせてもらったが実感はできなかった。