【第3回】おにいちゃんは……1番だったもん | マイナビブックス

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妻と子の明日が、幸せでありますように

【第3回】おにいちゃんは……1番だったもん

2017.04.05 | 岩川大地

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「でも、おにいちゃんは……1番だったもん」
純架は……咲さんの胸のなかで泣きながら、風太郎との結果を比較していたんだ。かわいそうに。それじゃあ、幸せにはなれないんだよ。そう思ったけれど、口と表情には出さなかった。
「そうだね、おにいちゃんはどうにも、足が早いんだよね。でもね大丈夫。かけっこがビリだって、咲さんみたいな素敵なお母さんと結婚できたから。そしたらきっと、かけっこの結果なんて気にもならないよ」
「そゔかなぁ……。でも……悔じいもん」
「ああ、そうだね悔しいね。じゃあ今日は一緒に走る練習をしようね。愛しているよ、純架」
『純架の今日が、幸せでありますように』
私と咲さんの2人で、純架にお祈りを捧げた。
咲さんの柔らかい抱擁に身を包まれて、純架はじっと耳を傾けている。どうやら喜んでくれているようだ。そして涙も止まってくれた。
私たちの愛が、純架にたっぷりと伝わってくれればいいな。
きっと純架にも、大きな幸せが訪れる日がやってくる。そんな日を咲さんと2人で寄り添って、楽しみにしながら待ち続けたい。

私が咲さんを初めて見た時、なんて綺麗で可愛い人なんだろうと思った。なんて整った顔で、麗しく、可憐なんだろうと。どうしてこんなに透明感があふれているのか。清楚で、まるで天使だ。
つまりは私の一目惚れだった。そして、私は咲さんと結婚したいと思ったんだ。人生で初めてしっかりと、家庭を持ちたいと思った。咲さんと幸せな家庭を作り上げたいと、私は切実にそう願ったんだ。
だから私は行動した。ストーカーと呼ばれないように気をつけつつ、咲さんへ猛アプローチをかけたのだ。あなたと結婚したいという熱い想いは、行動で示した。
何度断られてもフラれても、悲しい気持ちはおくびにも出さず、咲さん以外の女性には見向きもせずに、ただひたすらにアプローチを続けた。
ようやく念願かなって、初めて2人きりのデートにこぎつけたとき、私は言ったのだ。
「ずっとあなたを探していました。この私の命にかけて、咲さんを幸せにします」
それを聞いて咲さんは大変迷ってしまったと後年教えてくれた。それは至極当然だった。天使である咲さんと比較して、私はあまりにも釣り合わないから。私は咲さんみたく顔も際立ってはいないし、お金だって持っていない。職だって平凡なリーマンで、安月給だ……。

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