【第０回】心臓の鼓動がしない少女

　鼓動は人が生きるために、心臓が血液を送り出す際に聞こえる音だ。人が生きている音だ。証でもある。

　そんな当たり前のことが、心臓の鼓動がしない人なんているだろうか。

　至極当然だが、そんな人間はいない。鼓動がなければ、それはきっと人ではない。生命ですらないであろう。と、万人がいうことを俺は確信している。

　常識の通じない、理想を語り想像を現実にすることのできるゲームの世界の話などではない。俺は、俺たち夫婦は知ってしまったのだ。非常識を常識として受け入れなければならない、現実を――。