【第3回】第1章・これでいいのか? 東京ゲームショウ 1-2:主催者は来場者がもっと快適に楽しめる環境改善に早急に取り組むべき(1)
2016.03.25 | 鴫原盛之
筆者のように、「東京ゲームショウ」の会場に毎年足を運んでいる人は混雑に慣れているので(慣れていても取材の仕事はキツいですが…)、「混んでいるのはいつものことさ。」と、とりあえずは割り切ることはできます。しかし、生まれて初めて会場に来た人の場合はそうはいかないでしょう。今回初めて行った人の中には、「ずっと並んでばかりでちっともゲームが遊べないから、こんなイベントにはもう二度と行きたくない!」とガッカリして帰った人がきっと少なからずいたのではないでしょうか?
小さな子どもにせがまれて出かけていった保護者の方々も、きっとご苦労が耐えなかったことでしょう。「東京ゲームショウ」には小さい子ども向けの「ファミリーコーナー」も設けられており、こちらは比較的スペースには余裕があるので、少なくとも近くの人と肩が触れ合うようなすし詰め状態には今のところなっていませんが、座って休める場所はさほど広くありませんし、「ファミリーコーナー」のみ出展されたゲームでも60分待ちのプラカードもときどき見かけるような状態です。
そこからさらに人がごった返す「本部」に行こうものなら、ベビーカーを押しながらの移動は非常に困難ですし、小さな子どもを手放しで歩かせるのもかなり危険なように思われます。もし万が一、人混みの中で子どもの気分が悪くなったりでもしたら一大事でしょう。しかも、会場内には休憩や飲食をするためのスペースやイスがほとんどなく、ゆっくり休むためには、「ファミリーコーナー」の床に敷かれたシートの上に座るか、あるいは会場(ホール)からいったん外に出て近くのレストランに行くぐらいしか現状方法がありません。
飲食コーナーも改善の余地が大いにあります。CESAは、公式サイトにおいて「今年のTGSは、飲食コーナーもすごい!」と宣伝していましたが、筆者に言わせれば単にカレーと焼きそばの種類が若干増えただけで、テーブルおよび座席の数などの環境面をトータルで考えればお世辞にも以前よりもよくなったとは言い難い状況でした。実際、筆者も取材の合い間に飲食コーナーで食事をとりましたが、「すごい!」と感じたことは特になかったというのが正直なところです。
小さな子どもにせがまれて出かけていった保護者の方々も、きっとご苦労が耐えなかったことでしょう。「東京ゲームショウ」には小さい子ども向けの「ファミリーコーナー」も設けられており、こちらは比較的スペースには余裕があるので、少なくとも近くの人と肩が触れ合うようなすし詰め状態には今のところなっていませんが、座って休める場所はさほど広くありませんし、「ファミリーコーナー」のみ出展されたゲームでも60分待ちのプラカードもときどき見かけるような状態です。
そこからさらに人がごった返す「本部」に行こうものなら、ベビーカーを押しながらの移動は非常に困難ですし、小さな子どもを手放しで歩かせるのもかなり危険なように思われます。もし万が一、人混みの中で子どもの気分が悪くなったりでもしたら一大事でしょう。しかも、会場内には休憩や飲食をするためのスペースやイスがほとんどなく、ゆっくり休むためには、「ファミリーコーナー」の床に敷かれたシートの上に座るか、あるいは会場(ホール)からいったん外に出て近くのレストランに行くぐらいしか現状方法がありません。
飲食コーナーも改善の余地が大いにあります。CESAは、公式サイトにおいて「今年のTGSは、飲食コーナーもすごい!」と宣伝していましたが、筆者に言わせれば単にカレーと焼きそばの種類が若干増えただけで、テーブルおよび座席の数などの環境面をトータルで考えればお世辞にも以前よりもよくなったとは言い難い状況でした。実際、筆者も取材の合い間に飲食コーナーで食事をとりましたが、「すごい!」と感じたことは特になかったというのが正直なところです。
「ファミリーコーナー」のステージイベント前ではのんびり座れるが、ゲームを遊ぶためにはやはり立ったままある程度の時間を待たされる。
会場で実際に購入したカレーライス。味自体は悪くなかったが、狭くてイスがほとんど用意されていない場所で食事させられるのはいかがなものだろう… ※注:右写真は飲食コーナーとは別の場所で撮影
ここからはCESAによる「来場者調査報告書」のデータを調べてみることにしましょう。今年の来場者に対するショウの認知動機に対する質問には、「毎年恒例なので」という回答をした人が全体の3割を占めています。また「東京ゲームショウ」の来場回数については、「初めて来た」と「過去に1~3回来た」と答えた人が2年連続で減少し、逆に「4~6回来た」と答えた人の割合は2年連続で増加となりました。さらに7回以上来ている常連客と言ってもいい層は2007年が17.6パーセントだったのが2010年は24.3パーセントに増え、平均来場回数は2007年の2.9回から2010年には3.8回に上昇しています。
また、同アンケートには「ショウの満足度」を聞いた結果も載っていますが、「とても満足」または「まあ満足」と答えた人の割合はここ数年間ではほぼ横ばいですが、「とても満足」の割合が2010年では過去5年間で最低の24.6パーセントでした(※最高は2006年の30.6パーセント)。
つまり、好意的に解釈すればリピーターは年々増加していることになりますが、一方では初めて来た人が満足に楽しめずに「もう二度と来ない。」という評価を下している人が増えている可能性も否定できないのではないでしょうか?
標本数(人) 1,094 1,116 1,109 1,171
初めてまたは1~3回来た人の割合 81.4% 81.6% 80.2% 73.7%
7回以上来た人の割合 17.6% 16.9% 17.4% 24.3%
平均来場回数 2.9 2.9 3.1 3.8
「とても満足」と答えた人の割合 26.7% 27.2% 29.7% 24.6%
開催年 2007年 2008年 2009年 2010年
※「東京ゲームショウ来場者調査報告書」のデータを元に作成。
もし「東京ゲームショウ」が、例えば「東京ディズニーランド」のように年中無休で営業しているのであれば、「今回は混んでいて遊べなかったけど、次に来たときには並んで挑戦してみるか!」とお客様もある程度納得して帰っていただけるかもしれません。しかし年に一度の催事で、なおかつ展示されるゲームはその年限りであることがほとんどというイベントの性質上、一度不満を覚えたお客様に「この次」という言葉は存在しないと考えるのが妥当でしょう。
逆に、毎年のように足を運んでいる人は混雑する状況が前もってわかっていますから、あらかじめ各メーカーのホームページやニュースサイトなどを利用して「今回はこのゲームとあのゲームを遊びに行こう!」と、特定のタイトルだけを決め打ちして来場しているのではないかと推測されます。あるいは、自分の好きなタレントの出演するイベントや、展示コーナーとは別に行われているコスプレイヤーの集合スペースや各種イベントなど、特定のイベントにだけ参加すれば満足という比較的コアなファンの割合が年々増加しているのではないかとも考えられます。
実は筆者は、以前から「東京ゲームショウ」の入場者はあらかじめ制限すべきだという意見を持っています。理由はもちろん、来場した人がひとつでも多くのゲームを遊べるようにしたいからです。しかしこれには大きな問題があって、入場者を絞ってしまうとゲームショウのチケットがプレミア化して入手が困難になる可能性が高くなり、その結果ネットオークションや金券ショップを利用した転売屋などが絡んでくる事態におそらくなるでしょう。チケットが高額で取引される状況はけっして好ましい状況ではありませんし、現在の前売り券であれば千円という手頃な価格で誰でも入場できるシステムが崩れてしまうことにもなりますから、ここは非常に難しい問題です。
前述したように、事前に混雑が予想されるゲームについては整理券を配ることで対応していますが、その整理券の配布方法についても改善の余地があるでしょう。例年、人気タイトルについては開場直後の1時間前後で配布が終わってしまうのですが、この方法では自宅が会場から遠かったり、あるいは午前中に仕事を済ませて午後になってから遊びに行こうかという場合は、事実上これらのゲームを遊ぶことが不可能となってしまうからです。また、今年は整理券を配布していなかったゲームについても、予想以上に混雑した結果「入場できません」と書いたプラカードを掲げて、一時的に入場制限をしているブースも散見されました。これはけっして看過できない問題であると思います。
たった数本のゲームを遊ぶために、わざわざ電車賃や長い時間をかけて会場まではるばる出かけ、しかもプレイするまでには人混みの中を何時間も立ったまま待たされる現実が待ち受ける「東京ゲームショウ」。そんなイベントに行く価値を、みなさんははたして見出すことができますか? そして主催者および出展社のみなさんにおかれましては、来年以降もこのままの状態で運営を続けてもはたして本当にいいのでしょうか?
早起きして安くない交通費をかけてまで遠路はるばるやって来たのに、「いざ着いてみたら、ちっともゲームが遊べないし整理券の配布もとっくに終了していて失望した。」などと思われてしまっては、エンターテインメント産業従事者としてはもはや失格の領域でしょう。とりわけ、ショウが開催されるずっと前から「あのゲームが遊びたい!」と胸をときめかせてやって来た子どもたちが、もし当日になって「入場できません。」「整理券の配布は終了しました。」などという立て札を目の当たりにしたら、その失望たるやいかばかりでしょうか? 夢を与えることが我々の商売なのに、逆にそれを壊してしまっては本末転倒ではありませんか?
いずれにせよ、来場者がゲームを十分に楽しめる環境になっていないという時点で、主催者であるCESAは何らかの対策を講じてしかるべきでしょう。不景気と言われて久しい昨今(※ゲーム業界も立派な不況業種であると筆者は思います)、毎年のように入場者が増え続けているイベントを実行できるのは本当に素晴らしいことです。だからこそCESAをはじめメーカーなどの出展各社は、お客様にいかに快適に遊んでもらえるにはどうするべきかを、今のうちに真剣に考えて実行する必要があると思います。
関係者のみなさんでいい知恵を出し合い、これからは規模だけでなくサービスレベルも世界最大のサイズを誇る一大娯楽イベントとして、「東京ゲームショウ」がさらに広く世間に認知されるようになることを願ってやみません。
以下、来年以降の「東京ゲームショウ」に参加しようとお考えの皆様方に、僭越ながら筆者からの要望などをざっと書いていくことにします。(※来場者がゲームをたくさん遊ぶため以外の目的や要望も含みます。)