【第1回】まえがき/冬の太陽 | マイナビブックス

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ゴルフプラネット 第36巻

【第1回】まえがき/冬の太陽

2016.04.11 | 篠原嗣典

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まえがき

 

 ゴルフのエッセイとは…… 色々と考えていたのが2008年でした。

 巻はその年に書かれた話をまとめたものです。

 

 ゴルフのエッセイは物語からニュースまで、何でもありなのだと最終的には開き直ったのですけど、ルールの大改正があり、北京オリンピックがあり、リーマンショックが起きた2008年はゴルフ業界も大変な1年でした。

 Golf Planetも色々と変更がありました。必要に応じて変化した最も大きなものは、技術系のCDーRを色々な人とコラボして作ったことで、求める読者の勢いに押し切られた結果とはいえ、36巻でも文中にその話が所々に出てきます。

 

 象徴的なものとして『本当にありそうな怖い話』というエッセイがあります。これは完璧に物語で、大好きだと言ってくれる読者もいます。

 当時、最も多かったメールが「長すぎる」というものでした。内容にかかわらず、長すぎるものは駄目、というのは、この年から急激に増えていくクレームです。前年に米国でiPhoneが発売されたことに対抗する意味で、国内ではスマホが発売され、メールマガジンを読む形態に変化が起き始めたからだと分析していますが、正直に書くと戸惑いました。

 

 大病の治療が上手くいって体調が復活していく様子が行間に滲み出ていますが、振り返れば、まだまだ症状が出ていたのです。そういう不安定さが読み物としては面白さになっているのが36巻のセールスポイントです。

 ゴルフの難しさを痛感しつつ、どん底から這い上がっていく雰囲気が、ゴルフができることの感謝に繋がっていきます。読後にゴルフがしたくなったと感じてもらえれば幸いです。

(2014年1月)

 

冬の太陽

 

 夢がある。ゴルフ場にオブジェを置きたいのだ。朝日が当たる場所に、石で出来た数点のオブジェを置きたい。

 

 真ん中のオブジェから見て、石の配置は、夏至の太陽が上がる位置と冬至の太陽が上がる位置にそれぞれ置く。出来れば、オブジェからも、その時の朝日が覗けるようにしたい。

 

 インカのマチュピチュやその他の石の遺跡ではないが、夏至と冬至はゴルファーにとっても大事なことである。決して大きなオブジェでなくとも良い。わかる人だけがわかっていれば良い。早朝を知っている人は、そのオブジェと朝日を見比べながら、季節の移ろいを感じるのである。

 

 年が明けて、新春だなぁ、と感じるのは夕方である。冬至を過ぎたので、日に日に日没が遅くなることがわかるからだ。春は確実に近づいてきている。

 

 大晦日のゴルフで、今シーズン初めて凍ったゴルフコースを体験した。昨シーズンは1回も凍っていなかったので、ずいぶんと久しぶりだと思ったが、まだ、序の口で、釘が付いた用具を使わなくともティーは芝生に刺さったし、グリーンもどうにもならないほど凍っていたわけではなかった。

 

 一つだけ驚いたのは、頑丈だと思っていたゼロティーがポキポキと打つたびに折れたことだ。寒さに弱いのか? と疑問に思っていたら、昼食時に弟も、使用している先輩も「折れるねぇ」と折れたティーを手にして別のテーブルで話題にしていた。どうやら、ゼロティーは寒さには弱いようだ。

 

 昼前後の後半のプレーではティーは折れなかったが、今後の観察が必要だと思った。

 

 極寒の中でのプレーは出来ればしたくないのが、全てのゴルファーのささやかな祈りだと思う。私は以前は寒さを苦としていなかったので熱いより寒い方が良いと意地を張ったこともあったが、病気をして以来、寒さに敏感になってしまったので気温が一桁になると寒くて仕方がない。

 

 1月、2月と冬は厳しくなっていくが、その先には春が待っている。春を意識しながら、真冬のゴルフを乗り切るのも、この国の関東エリアでゴルフをするゴルファーの楽しみでもあり、誇りでもある。

 

 雪などで、完全にゴルフ場がクローズになってしまうエリアからすれば、ゴルフが出来るだけでも幸せであり、感謝しなければバチが当たるというものである。

 

 話は戻るが、冬のゴルフでは太陽は心強い味方である。日光の温かさに助けられることは多々ある。その太陽の高さも、これからドンドン高い位置に戻っていく。これは、昼に練習場に行くことでよくわかる。夏には全く眩しくないのに、冬になると眩しくて時間帯によってはボールが見えないので、太陽の高さを知るのである。

 

 もちろん、ゴルフコースでのラウンド中も、低い位置にある太陽が眩しくてボールを目で追えないということがある。こういうときは、寒さも手伝ってボールが飛ばないので、とても寂しい気持ちになる。それでも冬の太陽はやっぱり頼りになる味方なのである。

 

 ウルトラセブンは、太陽光線をあびてエネルギーを充填したが、冬のゴルフの際、私はウルトラセブンを意識して、太陽に向かって目を閉じて胸を張ったまま静止することがある。時には、その力を飲み込もうと口を開けてパクパクしてすることもある。まあ、信じるかどうかは別だが、エネルギーに満たされた気分になり、得をした気持ちになれる。

 

 コース内で日が当たる場所ならどこでも出来るが、人に見せるものではないし、妙なタイミングで見られれば『とうとう、cーnoさんもゴルフ馬鹿ではなくて、本当の馬鹿になってしまったのね……』と哀れに思われてしまうので、一応周囲の目は気にはする。

 

 でも、大叩きしたあとのホールで、降格した打順に暇を持て余しているときなどに、太陽光線を吸収するウルトラセブン方式は気分転換になって良い。流石に、夏の炎天下ではエネルギーが逆に吸い取られてしまいそうなのでできない。弱い太陽光線だからこそできる冬のゴルフの秘かな楽しみでもあるのだ。

 

 ただひたすらスコアを追い求めるのもゴルフの一つの側面であり、それを頭ごなしに否定はしない。でも、冬の太陽すら自分のゴルフの味方にする心の余白が、スコア一辺倒のゴルフを何十倍も昇華させる可能性があることを考えてみるのも悪いことじゃないと提案したい。

 

 それもこれも、お天気次第で、曇や雨なら太陽は拝めない。普段より何倍もお天気が良いように前夜に祈るのも、冬のゴルフの内ということで。

(2008年1月11日)

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