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dogma 上演台本

【第3回】⑤4組の模範生/⑥楠木登場

2016.04.18 | 宇野正玖

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⑤4組の模範生

 

(アカマツ、ニッタが入ってくる。ナワが立ち上がる。)

 

ナワ     何で君たちがここへ来る?ここは二組の教室だぞ。

ニッタ    卒業式は2組でやるのよ。情けない。まるであんたらに負けたみたいだわ。

ナワ     そんなことはないよ。でも、僕のいる二組に来れば君等も優秀になれるよ。

 

(ユウキやアシカガらは黙って席に戻る。ナワはニッタに手を差し伸べ、握手を求める。しかしニッタは無視する。アカマツが不適にも教壇の上に躍り出て、演説を始める。)

 

アカマツ   おめでとう諸君。僕らは選ばれた存在だ。ここにいる7名で、栄光の道を歩もうじゃないか。(上手を指し示す)

イガ     8人だよ。もう一人来る。一組のクスノキだ。

アカマツ   そうか!いや、めでたい。さあ、黒板に威名(いめい)を刻もう!僕らの名は、永遠に崇高なものとして残り続けるんだ。(黒板の上手寄りに自分の名を記す。)

ユウキ    何言ってんの?あいつ。

チグサ    他のクラスのやつってみんなおかしいよね。

イガ     ・・・・ああ。なんか、楽しそうでいいよね。

ユウキ    変よ。

ニッタ    私も(黒板に名を刻む。)

アカマツ   (ニッタを抱き寄せ)君は選ばれている。

ニッタ    ええ。私たちは選ばれてる・・。

 

(ニッタとアカマツは抱き合い、奇妙に自分達をたたえ合う。2組の面々はあきれている。)

 

ユウキ    ちょっと!どうかしてるんじゃない?他のクラスのやつと一緒に卒業なんて、やなんだけど。

チグサ    まあ、いいじゃない。今日でお別れなんだし。

アカマツ   僕らの場所はどこだい?

アシカガ   後ろならどこでも空いてんだろ。でも俺の席の近くには座るな。この付近は満席だ。

アカマツ   え?すごく空いているよね?

アシカガ   気持ち悪ぃんだよ、おまえら。

アカマツ   仲良くしよう。(ニッタに)さあ。(アシカガのいる下手側の先頭に座ろうとする)

ニッタ    ええ。

ナワ     (ニッタに再び手を差し出し)やっぱり僕の前に座りたいかい?さあ、僕の手を取りなよ。この手が、満点を導き出したんだ。

 

ニッタは手を取らず、踵を返して上手に移動する。ニッタが近づくと上手に居座っていたユウキ、チグサは立ち上がり、場所を移動しようと荷物を持って立ち上がる。チグサはイガの手を引き、二人はニッタから離れようと移動するユウキに付き添う。ニッタのかわりにアカマツがナワの握手に答える。にこやかに。そしてさわやかに上手に移動してニッタの隣の席に着く。イラつくナワはなんとしてもニッタと握手をしたいのか、ニッタのまえに回り込んで三度、握手を求めようとする。しかしアシカガに首根っこを掴まれ、中央に放り出される。

 

アシカガ   何がしてえんだよお前。

ナワ     だって、僕が手を差し伸べたんだよ!この僕が!

アシカガ   うるせえよ!

ニッタ    なんか二組のやつらって変だね。

アカマツ   そうだね。

 

(ナワはなんの意地なのか、自分の机と勉強道具を持ち出し、ニッタの後ろの席に座りだす。ニッタはそれを一瞥するとすぐに前へ向きなおす。クスノキが現れる。丁度アシカガの立ちはだかった背後に。)

 

 

⑥楠木登場

 

クスノキ   どいてくれよ。でかい図体のせいで景色が見えない。

アシカガ   おまえの来るところじゃねえ。

クスノキ   じゃあ、帰って寝ていてもいいかな?

アシカガ   永遠にな。なんならあっちに寝床作ってやるぜ。(下手側を指差し。)

クスノキ   ありがとよ。

 

立ち塞がるアシカガをどかし、クスノキは下手ツラに歩いていく。ユウキやチグサはクスノキが背後に来たことに身構える。そしてアシカガの席だったところに胡坐をかき、アシカガの荷物らしきものを上手に放る。アシカガは不機嫌そうに荷物を取って埃を払うと、上手の手前、上手の奥席に座る。イガのギターアームが落ちていたので手に取ると、ゴミでも捨てるようにクスノキのいる方へと放る。クスノキはアームを手に取り、それを見つめる。イガはその様子を見て取り。

 

イガ     僕のだ。返してくれないか。

クスノキ   ・・・。

イガ     さあ。

クスノキ   ここの生徒が持っていていいものじゃない。

イガ     は?

クスノキ   没収するぜ。

イガ     ・・・。

 

クスノキはギターアームを座布団の下に隠す。イガは諦めて席に戻る。ここで席の位置関係が定まる。下手側先頭にユウキ。二列目にイガとチグサ。三列目にクスノキ。上手側先頭にアカマツとニッタ。その後ろにナワ。更に後ろ三列目にアシカガが陣取る。アカマツが立ち上がる。

 

アカマツ   (クスノキに)よろしく。アカマツだ。君の噂は聞いている。

クスノキ   ああ、よろしく。

アカマツ   ああ。君は刻まないのかい?君の名だ。(黒板を指しながら)

クスノキ   挨拶は終わりでいいかい?

アカマツ   ああ、そうしよう。(教卓の前に移動し)さあ、みんな集まったね。今日は素晴らしい日だ!これから僕らは栄えある卒業演習を教授できる!皆で晴れ晴れしく、(おごそ)かに散華(さんげ)しようじゃないか!

ユウキ    しきんないでよ。

チグサ    卒業演習?

アカマツ   常識を問うだけの通過儀礼さ。当たり前のことを答えれば、栄光が待っている。

チグサ    当たり前のこと?

アカマツ   そうさ。共に歩もう。君と僕で。(チグサを抱きしめる。)

チグサ    え?

 

(イガがアカマツを引き離し、チグサを護るように間に入る。)

 

イガ     なれなれしくしないでくれよ。

アカマツ   ?(怪訝そうに二人を見る。)

チグサ    ・・・。

 

(チグサは恥ずかしげに、さらに申し訳なさそうに俯いている。イガもバツが悪そうにしている。)

 

アカマツ   あれ?二人は何か、特別な間柄なのかい?

ユウキ    あんた空気読めないわね。

アカマツ   空気ってなんだい?

ユウキ    もう話しかけないでよ。

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