【第3回】Period.4 八人 ―(1) | マイナビブックス

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Loss 上演台本

【第3回】Period.4 八人 ―(1)

2016.04.18 | 宇野正玖

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Period.4 八人

 

(上手前からルシファー、上手奥からヴァーテュ、下手前からチェラブ、下手奥からサタンが現れる。サトゥルヌス、パワー、ガブリエル、スローンは4人の突然の出現に驚き、下げようとした銃を構えなおし、新しく出現した4人にそれぞれ銃口を向ける。)

 

パワー    またか!

ガブリエル  一体何人いるの!?

 

(新しく出現した4人も、中央の4人の戦闘態勢に備えて銃を構える。)

 

サトゥルヌス ちょっと、ちょっと待て!話を聞け!

ルシファー  なら銃を下げさせなさい!

スローン   あんたらが先、先に下げなさいよ!

ヴァーテュ  誰が敵?誰が私の敵なの?ねえ!

 

(怯えるヴァーテュは突然銃を二発乱射するが、見当違いの方向を撃ってしまい、誰にも当たらない。それでも皆は被弾を恐れ、一時身を屈めて避難する。)

 

銃声×2 カラ音数発

 

女達     きゃあ!

パワー    アブねえ!おい、おまえイカレてんのか!

 

(ヴァーテュは弾の出なくなった拳銃のトリガーを何度も引いてみる。しかし弾は出ない。)

 

ヴァーテュ  いやああああ、やだ!死んで!死んで!

 

(パワーがヴァーテュを殺そうと銃を構える。しかしまだ本当に撃つ気はない。)

 

パワー    おまえが死ね。

ヴァーテュ  きゃー!やだやだやだ!

サタン    待て!

サトゥルヌス 待ってくれ!みんな!落ち着け!話を聞くんだ!

チェラブ   話って何?

ガブリエル  お願い、ここは従って。闇雲に殺し合っても意味がない。ほら、私は、銃を置くわ・・。

 

(ガブリエルが銃をそっと床に置く。皆はそれを黙って見ている。)

 

スローン   私も・・・・。

パワー    ・・・・。

 

(スローンもガブリエルの動きに合わせて銃を床に置く。パワーも構えを崩し、銃を腰にしまう。)

 

サタン    ・・・下げよう・・。

 

(サタンが他の3人に促すと、サタンも銃を腰にしまい。ルシファーとチェラブも銃を下げる。ヴァーテュもそれを確認してから銃を下げようとする。)

 

パワー    おまえはいい。もう全弾撃ったろ。

ヴァーテュ  ・・・・・ごめんなさい・・・。

サトゥルヌス ありがとう。

パワー    (ガブリエルとスローンに)一応(銃を)拾っておけ。何が起こるか分からない。

ガブ&スロ  ・・・・。

 

(ガブリエルとスローンは周りを伺いながら銃を拾い、背中にしまう。)

 

チェラブ   それで、誰が敵で、どうやってここから出るのよ?

サトゥルヌス 順序よく行こう。まず、ここについてだが、

チェラブ   楽園でしょ?それは分かってる。まぁなんで楽園かは分からないけど、あんたたちは何?いつからここにいたの?あたしはチェラブ。チェラブってなんのことか分からないけど、とにかくあたしはチェラブ。言っとくけどあんたら全員だれだかわかんない。出ようによっちゃみんな私の敵ってことになるけど―

サトゥルヌス ―待ってくれ。みんな、分からない情報が多い。ここは一旦俺に話させてくれ。

チェラブ   なんであんたがしきんのよ。

パワー    はっ、うるせえ女。

チェラブ   え?

ルシファー  そうよ、うるさい。いいわ、あなたが仕切って。私はルシファー、あなたは?

サトゥルヌス サトゥルヌスだ。

ルシファー  (パワーに)あなたは?

パワー    名乗って得するかどうかわからねえ。別にいちいち教えてやる必要はねえと思うが。

ルシファー  そう、じゃあいいわ。

サトゥルヌス 名乗る、名乗らないはどっちでもいい。とにかくまず最初に―

ヴァーテュ  私は、私はヴァー・・・

ガブリエル  ちょっと、話の腰を折らないでって言ってるでしょ!

ヴァーテュ  ごめんなさい・・・。でも、名前・・・、

チェラブ   いいわ、言いなさいよ。

ヴァーテュ  ヴァーテュ・・・

チェラブ   ヴァーチュ?

ヴァーテュ  違う、違うの、ヴァー・・テュ、テュ!

パワー    おい!どうでもいい!いらいらすんなぁ!おまえ!

ヴァーテュ  ごめんなさい・・・!

サトゥルヌス まず!最初にいたのは俺一人だった。上のモニターを見てくれ。どんどん数字が加算されていく。どうやら時間制限があるのか、それはわからないが、次に、(パワーを指し)彼が現れた。

パワー    俺がいたときはこいつは隅に隠れてた。俺が出たのもおまえらと同じ感じだ。いきなり前に歩み出すと、ここがあって、銃を握っていた。

サトゥルヌス おそらくは皆同じ違和感を感じてここに、この、楽園に足を踏み入れた。彼が現れてからすぐに、彼女たちが、

ガブリエル  ガブリエルよ。

スローン   私はスローン。

サトゥルヌス ガブリエル・・?

サタン    聖書だな。天使の名だ。あんた(サトゥルヌス)は悪魔の名だ。それぞれ名付けられているのか?コードネームみたいなものだな。

チェラブ   何?口出さないんじゃないの?

サトゥルヌス とにかく、君たち4人が現れたのも、それから、

ルシファー  約2分後よ。

皆      !!

パワー    なぜ後から来たおまえにそれが分かる?

ルシファー  わからない。でも、分かるの。

サトゥルヌス うん、うん。おそらく君(ルシファー)は確かなことを言っている。続けよう。この楽園に来たものがまず最初に憶えさせられること、『敵を殺して楽園を去れ』それはみんな知ってるはずだ。

ガブリエル  ええ。

 

(皆は頷く。)

 

サトゥルヌス 弾丸は二発、そして、自分の名前だ。それも知っている。それ以外に、頭にあるはずだ。それを、そうだなキーワードと言おう。俺の場合は『世界の記憶』、総括してそうインプットされている。

チェラブ   私は違う。

サトゥルヌス そうだ。おそらく、推量ばっかりで悪いが、俺もすべてが分かる訳じゃない。おそらく、一人ずつ違ったキーワードがインプットされているはずだ。

スローン   そうなんだ。

サトゥルヌス まず、俺のキーワードについて話す。これは限定的だが幅が広い、俺たちは、日本人だ。西暦で言って2000年代、確か以前は夏、だった。

チェラブ   まあ、日本語話してるしね。でも、あたし、ぶっちゃけ何も憶えてないんだけど、何これ?記憶喪失とか?でも、不思議じゃない?こういう単語とかべらべら出てくるんだけど、思い出そうとしても何も思い出せない。ちょっと頭おかしくなりそうなんだけど。

サトゥルヌス 記憶は何故だか消えている。だが、都合のいいことに考える知能やら言語やらは残されているようだ。もちろん個人差はあるようだが、おそらくは現世にいたときと同じ。

ヴァーテュ  現世って、私たち死んでるってこと・・?

パワー    まさか?

サトゥルヌス すまない、死んでいる訳じゃない、おそらく。だが、現世というかどう言うべきか分からないが、ここは現世と対極的な関係にある、確かな空間だ。そうだ。歩き回ってみてくれ。

 

(サトゥルヌスは急いで袖にはけていく。袖を歩き回りながら。)

 

サトゥルヌス 今までいたとこがたぶん広場で、こっち側には狭い小道が入りみだっている。でも、あまり遠くには行けない。出口も無ければ光も射さない。俺の声も広場に届くだろう?

 

(皆はそれぞれ散り散りになって袖に入ったり出たりしてみる。)

 

スローン   ホントだ。人一人通るのがやっとって感じだね。

ヴァーテュ  えーなんで出られないの?

ルシファー  真っ暗・・、先に進もうとすると進めなくなる。ちょっと面白いかも。

スローン   (審判の場にて)この椅子は一体なんなの?

チェラブ   そこに座んなくちゃいけないのよ。

スローン   え?なんでそんなこと知ってるの?

チェラブ   さあ、なんとなく・・。

 

(ルシファーは下手手前の袖に入っていた。ルシファーの出かけにサタンが手を差し延べる。ルシファーはそれに気づき、特に不快感を抱くことなく、手を取ってしまう。二人は一瞬見合う。だがサタンはすぐに手を放し、隅の壁に寄りかかる。)

 

ルシファー  ・・・・。

 

サトゥルヌス 話を続けよう。みんな広場に戻ってくれ。

 

(袖に入っていた者達もみな広場に戻ってくる。)

 

サトゥルヌス こういった楽園の事情みたいなものが、おそらく俺だけにインプットされている。それと、現世のことを少し、もちろん現世において俺が一体何者であったのか俺自身にも分からない。俺はどうやらこの、楽園だとされる場所についての伝達事項を述べるよう、一任されているみたいだ。だが一番、一番気になることだが、

チェラブ   ここから出る方法でしょ?

サトゥルヌス そうだ。だが、これだけ喋っておいて申し訳ないんだが、それが分からない。

パワー    あ?

チェラブ   敵を殺せばいいんでしょ?だから敵はなんなのよ。

サトゥルヌス すまないがそれも分からない。

チェラブ   あんた何?結局役に立たないじゃない。

ガブリエル  そんなことはないわ。彼が今まで言ったこと、私たちは何も知らなかった。

チェラブ   でも出られないんじゃ意味ないじゃない。

スローン   だからここから出るために、それぞれキーワードを持ってるんでしょ?

サトゥルヌス そうだ。たぶん、その各キーワードをヒントに、俺は現世とのつながりを導き出すことができるはず。そのためには皆が協力して謎を解かなくてはいけない。だから、それぞれ、キーワードを教えてくれ。おそらくは、ここから出られる。

ガブリエル  なるほど、分かったわ。私は、『座って番号を振れ』そう記憶させられているみたい。私たちには、名前以外に一人ずつ番号が振られているようなの。だから一人一人の番号を特定して・・、でもそこまで。どのように番号を振ってどこに座るのかは分からない。

チェラブ   あそこよ。(審判の場を指し)

 

(皆がチェラブの指さした方を見る。)

 

チェラブ   私が記憶してるのは『あそこに座れ』なんなのかは分からないけど、座るのは一人だけでいいみたい。一人座ればみんなが楽園を出られる。私が知ってるのはそこまで。

サトゥルヌス なるほど。えーと、ガブリエル?

ガブリエル  何?

サトゥルヌス 番号は、分からないのか?君は何番、とか。

ガブリエル  ごめんなさい、分からないの。

 

(パワーが審判の場に座ろうとする。)

 

サタン    待て!全員聞いてからだ。

パワー    ・・・・・。

 

(パワーは審判の場に座るのをやめ、その椅子の近くに身を置き黙っている。)

 

サトゥルヌス (ルシファーに)君はさっき、時間を言い当てたな。何を知っている?

ルシファー  私は、『時間を気にしろ』と、そう言われてる。あと、なぜだか、何分経過したかとか分かる。何となくじゃなくて、わりと正確に。上のモニターを見て。あれ、ただ数字が加算されていくように見えるけど、正確に時間を刻んでるの。今はたぶん私がここに来てから○○分経ってる。

ガブリエル  時間が経つとどうなるの?

ルシファー  分からない。私が知ってるのはそれだけ。

スローン   私も言っていい?

サトゥルヌス もちろんだ。

スローン   『座って名前を言え』座るっていうのは、たぶんあそこのことなんでしょ?名前は私たちのそれぞれの名前。だから―

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