【第1回】まえがき/新ツンデレ | マイナビブックス

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ゴルフプラネット 第34巻

【第1回】まえがき/新ツンデレ

2016.04.11 | 篠原嗣典

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まえがき

 

 2008年はオリンピックの年でゴルフ規則の大改正がありました。段階的に施行されたドライバーの高反発規制が一般のプレーヤーを含めた全ての人に適用になったのです。

 34巻はコースがテーマで2008年に書かれたものをまとめたものですが、用具の話であるはずのこの話題が何度か出てきます。ゴルフコース上で混乱が起きていたのがその理由です。

 本来であれば、ゴルフ用品メーカー、販売店が徹底すればすむのに、うやむやにして誤魔化したツケがゴルフコースで露呈したのです。「月例では使えるのか?」「コンペでは?」「正式なラウンドとは?」コース関係者のほとんどは、明確な答えを持っていませんでした。

 そういうことの最中に書いていたので、コースの話として用具の話が出てきます。そのつもりになって読んでもらえれば、楽しめると思います。

 

 2008年はゴルフコースにとって、非常に象徴的な1年でした。数年前から続いていた小さなゴルフブームが、具体的に数字として出てきたのが春頃で、底を脱したと自信を持った関係者が喜んでいたのに、9月にリーマンショックが起きました。

 バブルが弾けたときには、数年間で起きた変化を早送りして数ヶ月で見せられるような経験をしました。そういう話も出てきます。現在に繋がっている話です。

 

 34巻は経験していることが強烈だったことや自分自身が大病の治療中だったこともあり、感情的な話も時に出てきます。

 読み返して、ちょっと驚いたりします。天国と地獄というか、一寸先は闇というか、ダイナミックに時代が動いていくことに翻弄されていたのでしょう。

 現在に確実に繋がっていく話が多く出てきます。時代の生き証人を意識して読んでもらえれば、倍楽しめると思います。

(2014年1月)

 

新ツンデレ

 

昨年の4月の誌面で、ツンデレについて本イチで触れた。

 

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ツンデレ

 

 秋葉原で流行っているメイド喫茶から発生した言葉。ツンツンして生意気だが、最後には甘えてくるというキャラクターのこと。

 

 巷のゴルフコースには、自分の調子が悪いと不機嫌になり、周囲を嫌なムードにしてしまう未熟な人がたくさんいる。こういう人に限って、次のゴルフへ呼ばれないことを恐れて終わると急に優しい人に変身したりするから面白い。このような人は軽蔑を込めて、ツンデレという。

 

 ゴルフでは素の自分が無意識に出てしまうものであるが、開き直って好き勝手する人には困りものである。自分に甘えを許さないように意識すれば改善できる話である。

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 ツンデレという言葉が浸透しているかどうかは別として、冬休みにしたゴルフ談義で、ツンデレを面白い使い方をしている人がいて、なるほどと感心したのである。

 

「好きなゴルフコースと、好きなタイプの女性は一致するでしょ」

 

 私も常々言っているが、その日はその台詞を別の人が言ってゴルフ談義が始まった。

 

 その人は私より少し年下の30代後半で独身。好みの女性は年上のいわゆる熟女で、かつ、セレブなら最高だという。好きなコースも、古い名門タイプだと言うのである。何とも言えない落ち着きと全て任せておけば大丈夫だという安心の中でプレーするゴルフは快感だというわけだ。

 

 私は根っからのスケベなので、ストライクゾーンは広めであるが、実は、彼が言うようなタイプの女性は苦手である。ストライクゾーンは高めに広いのではなく、低めに広いのである。ウブな少女のように出来たばかりで、下手すりゃ未完成のようなコースが好きだし、少し影があるような不幸な匂いにも無条件に惹かれるので、開場するのにすったもんだがあったとか、民事再生でムードが変わったというような不幸な感じも嫌いじゃない。まあ、基本的には何でも来い、なのであるが……

 

 色々と話をしていく中で、「私はツンデレが好きですね」という人が現れたのである。年齢は細かくは知らないが、私と同世代の40代前半。

 

 どうやっても攻略できず、挑戦すればするほどスコアを落とすような難しいコースなのに上がりのホールになると良いことがちょびっとだけあるようなコースが好きで、イントアウトだと、インの方が難しい上がりになっているケースが多いから意図的にインからプレーするというのである。

 

 ツンデレねぇ、と感心していると、それはわかる、という同感する声が複数出た。ゴルフの不思議な所って、そういう所なんだよね、と口を揃える。

 

 確かに、もうゴルフがやめたくなるような酷いプレーでは、最後の方では期待も何もなくなる分、力が抜けてスーパーショットが出るというパターンは多々ある。ゴルファーとしては、デレッとしてしまう瞬間だろう。

 

 話の奥は深い。私はデレッとだけを理解していたのだが、ツンに関しても女王様に虐げられるような快感があるというのである。まあ、優秀なゴルファーほどマゾ傾向があるという説もあるので、わからなくもない話ではある。

 

 やや話は脱線しながら、メンバーコースというのは奥さんと同じで身の丈にあったほどほどがちょうど良いとか、メンバーコースに一穴主義みたいに通っているなんてつまらないとか、結婚と恋愛の違いと同じでメンバーコースに合っているコースと通いたいコースは違うとか、色々と面白い話が出た。

 

 中でも、他人のメンバーコースをプレーするのは人妻と不倫するようなスリルがあるという話には笑った。私はそんなこと考えたことがなかったが、賛同する人もいたので、余計におかしかった。

 

 通い詰めるコースについて、分析する眼を持つことはゴルフコースを楽しむ上でたまらない魅力である。理由以前に、通い詰めるコースがあり、そういう時期があることはゴルファーにとって最高の幸せである。

 

 深く付き合わなければわからないことは、恋愛や結婚だけでなく、人間関係においてもたくさんある。ゴルフコースも同じである。

 

 表面的なものだけでなく、プレーするほどに細かいところも見えてくる。私は、コースの細かいところに魅力を発見するたびに、そのコースだけでなく他のコースにも当てはまったりすることを発見してゴルフコースそのものがますます好きになる。

 

 そういうことが重なるうちに、表面的なことはどうでも良くなっていく。表面的な分類は分類として、ディープな魅力に眼がいくのは快感である。

 

 コースについてのゴルフ談義は楽しい。好きなことを言い合って、馬鹿な話に笑う。今年もこういうゴルフ談義をたくさん出来れば最高である。

(2008年1月9日)

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