【第1回】■吉原・表通り | マイナビブックス

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吉原のエース 上演台本

【第1回】■吉原・表通り

2016.01.29 | 山野辺一記(エッジワークス)

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■吉原・表通り

 

   花魁の梅太夫、桃太夫、桜太夫が町人、武士たちと登場。

 

梅太夫  「…!」

桃太夫  「…!」

桜太夫  「…!」

 

   越後のちりめん問屋の若旦那越後屋Q太郎が登場。

 

Q太郎  「…!」

 

【ダンス】梅太夫、桃太夫、桜太夫、Q太郎、町人、武士たち。

 

   花魁梅太夫、桃太夫、桜太夫に声をかけるQ太郎。

 

Q太郎  「へい、へい、へ――い。そこの花魁さ~ん。一緒に遊ばな~い」

梅太夫  「わちきらが、誰だか知ってて、声をかけはりましたか?」

桃太夫  「かけはりましたか?」

桜太夫  「かけはりましたか?」

Q太郎  「当然。吉原一の花魁、梅太夫、桃太夫、桜太夫だと知ってますよ」

梅太夫  「そうではりましたか…」

Q太郎  「俺は越後のちりめん問屋の跡取り越後屋Q太郎ってもんさ。お金はほら、こんなに」

Q太郎  「ここは天下の遊郭吉原だろ。楽しまなくっちゃね――――」

 

【ダンス】梅太夫、桃太夫、桜太夫、Q太郎、町人、武士たち。

 

   Q太郎に

 

桃太夫  「面白い、お方でありんすなぁ」

Q太郎  「世の中、お金が一番。金持ちなら、楽しませてあげるぜ」

桜太夫  「わちきたちをお金で楽しませると?」

梅太夫・桃太夫・桜太夫「ほほほほほほほほほ」

Q太郎  「?」

 

   Q太郎に、

 

梅太夫・桃太夫・桜太夫「さようなら」

桜太夫  「お金があっても、品はなさそですなあ」

 

   怒るQ太郎。

 

Q太郎  「なんだよ。お高く止まりやがって」

 

   太夫の腕を掴むQ太郎。

 

梅太夫  「やめてくれなはれ」

タツの声 「ちょっと待った――――!」

パンチョの声「ニォ――――ン!」

Q太郎  「なんだ?」

 

   タツとパンチョ登場。

 

タツ   「ちょいと待ちな」

パンチョ 「ワン」

梅太夫・桃太夫・桜太夫「タツさ――ん」

 

   タツに、

 

Q太郎  「誰だ、おまえ?」

タツ   「俺の名前かい? 俺は忘八のタツってもんさ」

 

【タツ 心情描写】吉原の平和を乱すヤツには黙っちゃいないぜと威勢よく。俺は強いぜと意気高揚。

 

タツ   「忘八って知ってるかい? 仁・義・礼・智・信・忠・孝・悌の八徳を失った者とされる、吉原置屋の使用人兼…用心棒なのさ」

Q太郎  「ええい。おまえじゃない。名前を聞きたかったのは猫のほうだ」

タツ   「あっ、そう…」

パンチョ 「にゃお」

タツ   「こいつはパンチョ。メキシコ生まれの俺の相棒さ」

Q太郎  「なるほど、なんともメキシコ風な顔つきをした猫だな」

 

   Q太郎に、

 

タツ   「お客さん。ここは天下の吉原だよ。無粋な真似はやめましょうよ」

Q太郎  「俺は客だぞ」

タツ   「吉原ではね、花魁も客も武士も町人も男も女も位なんざ、関係ないのさ。みんな平等、自由を楽しむところなんですよ」

Q太郎  「俺のやることに文句あるのか!」

タツ   「お客さん、…粋を忘れちゃいけないぜ」

パンチョ 「ニャオン!」

 

   タツを睨むQ太郎。

 

Q太郎  「…」

タツ   「…」

Q太郎  「今日のことろは勘弁してやるぜ。覚えてやがれ」

 

   Q太郎退場。

 

タツ   「なんか…越後のちりめん問屋の若大将にしちゃ、気品がないなぁ」

 

   太夫たちに、

 

タツ   「はいはい。梅太夫、桃太夫、桜太夫、お客様をよろしく頼みますよ」

梅太夫  「タツさん。ちょっとわたしたちと遊んでいかない?」

タツ   「それはちょっと無理だぜ。これから料理の仕込みがあるんで、失礼しますぜ」

 

   タツ退場。

 

桃太夫  「もう~。タツさんたら」

桜太夫  「そこがタツさんらしいですね」

梅太夫  「ほんまに」

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