【登場人物】
私…(42) 結衣(ユイ)の母
結衣…(18) 私立女子高に通う落ちこぼれのひねくれ娘。
塾長…(落ちこぼれ)予備校の塾長
アシダ先生…某美術大学受験予備校の小論文講師・現役東京芸大大学院生
結衣の父
結衣の祖母
結衣の担任…大学卒業したばかりの新卒教師
結衣の学年主任
某有名予備校担当者
ほか
【プロローグ】
自分の子供が落ちこぼれだとわかった時、私は怒りにまかせて子供を叱りつけました。
いつも言っていたよね。「遊んでいないで勉強しなさい!」と。
勉強がわからなくなっている子供は、大概、勉強が嫌いです。
親や先生の言うことを聞いて、机に向かうなんてしない。
遊んでる方が楽しいに決まっているのです。
かつて。成績が振るわない私に、母は言ったものです。
「こっちは大学に行かせてやると言ってるのに、勉強が出来ないんだからしょうがない」と。
本当にしょうがなかったのでしょうか?
勉強がわからなくなっている子供を怒った瞬間、失望した瞬間、親は子供の敵になってしまいます。
子供の事を考えて怒っているにもかかわらず。
しかし、子供は親が思うほど、気楽ではないのです。
心の中では自分がさぼって落ちこぼれたという現実に、どうしたらいいのかわからなくなっている子もいるのです。
「どうせ、あたしなんか」
やる気を失い、希望すら持てずに、ひねくれている落ちこぼれ。
ただ、勉強がわからない、それだけの理由でスタートラインにも立てず、どうしたらいいのかわからないまま、助けも求められずに、崖っぷちにぶら下がっていたのです。
それが、私の一人娘の結衣(ユイ)です。
結衣が高校二年の冬のこと。
担任から突然、突きつけられた「留年警告」
その時点で偏差値34!
私が現実を知った時、結衣はまさしく学校一の落ちこぼれだったのです―。
これは、ひねくれ娘と母が共に戦った1年半の大学受験の物語。