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ゴルフプラネット 第30巻

【第1回】まえがき/キャンセル代復活の兆し

2016.03.25 | 篠原嗣典

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まえがき

 

 2012年の12月に電子書籍のGolf Planetの1巻は発売されました。

 1年が過ぎて、28巻まで発売されています。それだけでも十分に凄いことなのですけど、なんと30巻目になるのです。こんなにたくさんのGolf Planetが電子書籍で世に出るなんて、昨年の12月には全く想像もしていませんでした。

 ゴルフというゲームと文化に感謝です。

 

 本書は2007年に書かれた内容になります。

 ゴルフコースの話をする際に、2007年は特別な年です。

 前年から続いた記録的な暖冬で、関東では、冬の間、1回もコースのティーが凍りませんでした。天気が良ければ、シャツ一枚でプレーできるほどでした。

 プレーヤーには最高の状況も、コース管理の関係者は大変な思いをしたようです。例年通りというのが、芝生には良いのだと聞いて驚いた話も出てきます。

 

 翌年にルールの大改正がある関係もあり、用語の統一などが声高に叫ばれた1年でもありました。ティーのことをティ、キャディーはキャディと伸ばさないように統一する機運もあり、元々のメルマガはそちらの表現を採用していましたが、本書の中では読みやすさを優先してティー、キャディーなどと統一しております。

 この表記の統一は、ゴルフに関してはすぐに撤回されて、現在ではティー、キャディーと表記するのは普通です。

 2007年はほんの少し前のようでもあり、大昔に近くもある不思議な感じの時間を感じます。

 

 この年はゴルフコースについて、多くの質問があったこともあって、専門的な話から誰でも感じる基礎的な話まで幅広く書いています。その多くは現在でも十分に通じるものです。

 ゴルフ談義で話題にしたくなってもらえると嬉しいです。

(2013年12月)

 

キャンセル代復活の兆し

 

 個人的には、キャンセル代をゴルフ場が請求するのは邪道だと思っている。そもそもゴルフはキャンセルしない、というルールを自らに課して実行していれば、キャンセル代は発生しないのである。

 

 少し話は違うが、昨年の秋まで約10年無視をされていた先輩と和解することができた。私はこの先輩のことを尊敬しているし、大好きであることは、無視されていても変わらなかったので、本当に嬉しい出来事だった。

 

 その無視されたきっかけが、その先輩が主催しているコンペを私がキャンセルしたことが原因だった。29歳のときに、私はゴルフショップから広告代理店に転職したが、そこではイベントでキャスティングを担当していたので、休みが不定期だったし、更に悪いことに、諸事情で会社から私はゴルフを禁止されていた。それでも、休んでゴルフをしようと先輩のコンペの日程に合わせて休む予定で動いていたが、突如、仕事になってしまったのだ。

 

 先輩にそれを連絡すると、先輩はただ一言「偉くなったんだね」と言っただけだった。仕事だからとゴルフを躊躇なくキャンセルするのは、ゴルフは遊びだと見下しているからで、そんなに崇高で立派なお仕事をしているようにはお見受けできませんね、とそれ以前にその先輩が人を非難していたのを私は知っていた。自分は違います、と言いたかったが、どこが違うのかは怪しかった。

 

 ゴルフを見下してはいないつもりだったが、行動で示すことができない信念は偽物なのだということもよく知っていた。先輩がそれ以後私を無視しても、私は何も言えなかった。ただ、行動で認めてもらうしかないと信じるしかなかった。長い時間掛かったが、ゴルフをキャンセルする人間とは付き合わないというルールの先輩が例外として認めてくれるまで、ほぼ10年掛かったのだ。

 

 私の例は非常に特殊なものであることは百も承知である。それでも、私はそういう先輩がいることを幸運だと思っているし、そういうルールの中に自分がいることを誇りにも思っている。つまりは、心意気の問題なのだと思う(実際、昨年ゴルフに行く途中で財布を落としたときにはキャンセルしてしまった前科もあるし)。

 

 この話題になると、キャンセル代を払えば良いんじゃないですか、と大人ぶっていう人がいる。金を払えば良いと言う人ほど、意外にそのシーンになるとお金を払わないもので、こういう一見偉そうな人はバブルの頃の前金制のゴルフを体験していない。

 

 キャンセル代が復帰している傾向の中、私はあの頃のようになるのは健全ではないと心配しているのだ。

 

 バブルの頃、ゴルフのスタートは売れるほど貴重なものだった。予約日の予約開始時間にはゴルフ場の電話はパンクし、裏技がなければ自由に予約を取れない。予約を取ろうとメンバーになっても、行きたい日は皆同じで、やはり、自由にスタートは取れなかった。コンペ等の場合は前金でないと組数を抑えられないところもあったのだ。

 

 私は仕事でコンペの企画運営をしていたが、色々なゴルフ場の抑えているスタートの前金の合計が一番多いときで300万円にもなった。建て替えている会社も大変だったろうし、それが認められる社会も狂っていたと思う。

 

 年末に会ったあるゴルフ場のオーナーも、キャンセル代はプレー料金の8割ぐらいが良いという話をしていた。

 

 キャンセルされればゴルフ場は0円だが、コース管理も食材の準備も、清掃なども、キャンセルされたからとゼロにはできない。ある意味で生ものの仕入れのようなもので、その日のための準備はその日に消化されなければ意味がないのである。8割のお金が入ってくれば、コースはキャンセルされても損害が出ない。

 

 また、オーナー曰く、8割のキャンセル代が掛かると言われた瞬間、キャンセルする人は激減するだろうし、代わりの人を行かせたりする苦労もするだろうというわけだ。

 

 私は本音ではキャンセル代には反対だが、仕事なので色々な提案をした。前金を集めやすくするために、前金で振り込めば8割の金額でプレー出来る代わりに、キャンセルしてもお金は戻らないという仕組みはどうですかという提案が一番受けが良かった。これならキャンセルしない健全なゴルファーは、得をすることになる。当日割り増しでプレーする人のプラス分が、結果としてキャンセルが出てもそれを埋め合わせる。

 

 いずれにしても、一部の人のわがままなキャンセルが、妙なお金を発生させることは間違いない。一人一人の自覚があれば、未然に防げるのである。

 

 キャンセルの可能性があるのにゴルフを約束するのは違反である。ゴルフは、そこまで無理してするものではない。キャンセルしなくとも大丈夫な予定が組めることも、ゴルフをする資格だと考えれば良いのである。

(2007年1月10日)

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