【第1回】まえがき/スタイル | マイナビブックス

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ゴルフプラネット 第29巻

【第1回】まえがき/スタイル

2016.03.25 | 篠原嗣典

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まえがき

  

 2007年は石川遼プロが高校1年生でトーナメントに勝った年です。Golf Planetにとっても、色々と変化があった年に書かれたものが29巻の内容です。

 

 時の流れというのは不思議なものです。

 小学校1年生の甥っ子が登場する話があるのですが、彼は現在、中学生になっていて、部活で鍛えた割れた腹筋を見せてくれたりしています。

 それだけの長い時間が経過しているはずなのに、数ヶ月前に書いたような感覚になる話も出てきます。

 

 将来の研究者が、日本のゴルフが新しい時代に入ったとするポイントがあるとするなら、2007年になるのではないかと考えています。トーナメントだけではなく、末端のゴルフコースでも、急激に空気が変わり、本当の意味でゴルフが大衆化していくことを実感することがよくあったからです。

 読み返しながら、時代の勢いのようなものを強く意識しました。良い部分も、悪い部分も、現在に繋がっています。

 

 メールマガジンを書くときは、原則として発行の前週に一気に書きます。特別な場合があると、原稿を差し替えたりしますが、1年に数えられるほどしかありません。

 この年からブログ『ゴルフ惑星』を平行して書き始めました。

 本来であれば、日刊であるGolf Planetのほうに速報性があるべきなのかもしれませんが、結果として、ブログに速報性がシフトすることになっていきます。

 個人的には、広い視野になっていくように感じる2007年に書いたGolf Planetを気に入っています。季節感なども含めて、楽しんでもらえれば幸いです。

(2013年12月)

 

スタイル

 

 どんなゴルファーに見られたいか、というテーマは簡単そうで意外に難しい。

 

 それでも、どんなゴルファーに見られたいという意識を持っていないゴルファーは概して何か大きなものが欠けている場合が多いような気がするので、朧気でも意識はしておくべきなのである。

 

 ゴルファーは不思議なもので、そのファッションや立ち振る舞いでプレーする前に雄弁に自己紹介をしているものであり、プレーすれば、その何倍もの情報を放出してしまう。

 

 意識するとそれが変わるかと問われれば、答えは否である。意識して見られたい姿を演出しても意味はないではないか、というのは短絡的すぎる結論である。

 

 上手い下手も大事だろうが、それと同じぐらい自分がどのようなゴルファーに見られたいかということも大事なのである。極論を言えば、目指したい自分というゴルファーとしてのビジョンがちゃんとしていれば相乗効果でゴルフは簡単に上手くなるのである。

 

 ちゃんとというのは、少しの背伸びという意味である。上を目指さなければ意味がないが、あまりにも高い目標は、駄目でも当たり前という甘えも生む。少し背伸びをするということは、自分を知っているということでもある。

 

 人から見られた自分を想像する力は、自己採点をする力でもある。

 

 上手く見られたければ、上手くなる努力をすることである。人から見ても努力が見て取れれば、スコアが多少伸び悩んでも評価はされる。ところが、上手く見られたい気持ちだけで表面を飾っているだけでは、底の浅いことは一目でばれてしまう。

 

 スコアというのは魔物である。注意して付き合わなければ、簡単に取り憑かれてしまう。ゴルフの虜になるのは素晴らしい体験だが、スコアの虜になった人に明るい未来はない。スコアの虜になったら、人の視線など気にならなくなる。こんなに怖いことはない。

 

 予防の意味でも、まず、人の目を意識しよう。最初は簡単なことで良い。自分がやられたら嫌なことを人にしなければ良いだけだ。慣れてきたら、自分が心地良いことを人にも感じさせるように行動すれば良い。いずれも、自分の立場や気持ちではなく、人からの視点で見てみよう。これだけで、ゴルファーとして最低限の見栄えは良くなるはずだ。

 

 その中で、自然と自分の中でなるべきゴルファーの姿が出てくるはずだ。それは、ファッションにも、ゴルフプレーにも自然と滲み出る。心構えは結局全ての選択に影響するようになるからだ。

 

 私はゴルフに関してだけは、自分のスタイルを貫こうとしている。スタイルというのは、まさにゴルファーとしての心構えなのである。そして、スタイルというのは守るべき誇りにもなる。その背景にゴルフの精神があれば、鬼に金棒である。

 

 自己愛や自分の都合を優先するやり方は、どんなに極めてスタイルにはならない。

 

 Golf Planetの研修会は来年度に向けて追加メンバーの募集を始めている。研修会というぐらいだから、腕前に自信がある人ばかりなのでしょうね、とビビった質問も来る。私が問うのは、心構えだけである。

 

 腕前は後からついてくる。生半可な知識や体験で汚染された腕前の読者には何人も会ったが、そういう人の毒抜きに必要な時間を考えれば、適当な腕前ならない方がましである。

 

 ゴルファー同士が集まれば、自然とそこは学びの場になる。私は自らが中心となっているはずの研修会で、本当にたくさんのことを学んでいるし、良い体験もさせてもらっているし、刺激というエネルギーももらっている。自分のゴルフライフは、現在の研修会がなかったら違ったものになったと断言できるほど影響を受けている。

 

 それぞれが全く同じではないのは人間だから当たり前であるが、ゴルファーとしてのスタイルもここで違うものである。しかし、その根幹を認め合える仲間がいることは頼もしい。

 

 ゴルファーとして自分が目指すべきスタイルに完成はない。今年も丁寧に磨いてより高い次元を目指す旅である。

 

 旅は道連れ世は情け。

 

 物理的に難しい人には本当に申し訳ないが、物理的な意味で障害がないのであれば、機会を逃すのはもったいない話である。

(2007年1月16日)

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