【第0回】はじめに | マイナビブックス

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はじめに


カラーマネジメントの説明をはじめると、「必要だとは思っているけれど、どこからはじめればいいのか分からなくて……」とか、「本を読んだけれど専門的すぎて……」という反応が返ってくることがよくあります。
日頃からディスプレイの表示とプリントアウトの色が何となく合っていないと感じながらDTP作業をしていても、具体的にどうすればいいのかわからない、いろいろ試してみたら前よりも色が合わなくなってしまったという声を聞くこともあります。

時おり誤解されることがありますが、コンピュータのディスプレイに表示される色と、プリンタから出力される色、印刷機から印刷される色をできるだけ近しい状態で見るためにコントロールすることがカラーマネジメントであって、すべての表示や出力を100%同じにするものではありません。
ディスプレイのようにそれ自身が光を発して色を表示するものと、印刷物のように光源からの光を反射して色を見るものとでは、そもそも原理が違いますから、これらが完全に一致するということはあり得ません。
それでもそれぞれの表示を標準化して、できるだけ近づけるようにするための環境作りと技術がカラーマネジメントなのです。

市販されているディスプレイは一昔前なら一部のハイエンドモデルでしか表示できなかったAdobe RGBのような広色域のモデルが、手ごろな価格で入手できるようになりました。また、インクジェットプリンタやレーザープリンタも性能の向上が計られていますし、カラーマネジメントには必須のキャリブレータ(測定器)も、精度の高い測定が可能な分光タイプの機器が比較的導入しやすい価格帯で登場してきました。
これらを正しく使用し、Adobe製品のようにプロファイルを正しくハンドリングできるアプリケーションで運用すれば、今まで合っていなかった色をより正確に表示して確認することができるようになります。

本書では分かっている人からすると当り前すぎる部分も多々あるとは思いますが、何から手を付けたらいいか分からないという人向けに、DTPを前提とした場合に必要となるカラーマネジメントの基礎を、実践的に解説するよう心がけました。まずは色を見るというのがそもそもどういうことかと、正しく見るために必要な環境、ディスプレイの調整について説明しています。本書の続編では、プリンタから正しい色で出力するために必要なことと、DTPアプリケーションでプロファイルを運用する方法などについて解説する予定です。
カラーマネジメントは目標とする環境を正しく整えて、必要な機器を間違えずに運用していけば、決して難しいものではありません。
これからカラーマネジメントをはじめてみようという方や、今まで色が合わずに困っていた方が、本書を読んで今まで以上に色が合う環境を構築できる手助けになれば幸いです。
 
(2013年4月)