【第1回】ヒトの目に見える色 | マイナビブックス

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よくわかるカラーマネージメント入門講座 前編

【第1回】ヒトの目に見える色

2015.05.25 | 島崎肇則

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第1章 カラーマネジメントの準備

 

第1節 光源と色の見え方

 

ヒトの目に見える色

 

ヒトの目が色として感じ取っているものは、ガンマ線やエックス線など一連の波長からなる電磁波のうち、可視光線といわれる範囲に含まれるものです。ヒトの目には網膜の奥に杆体と錐体という細胞があり、この錐体が可視光線の波長に反応することで、目に入ってきた光を色として認識しています。可視光線はヒトの場合は380ナノメートルから780ナノメートルの範囲とされていて、380ナノメートルよりも短い波長は紫外線、780ナノメートルよりも長い波長は赤外線と呼ばれています。つまり波長が短いほど紫がかった色に感じ、波長が長いほど赤みが強く感じられるようになります。

なお、可視光線とされる範囲は生物の種によって異なり、蝶はヒトに見えない紫外線の領域を感じ取ることができる一方、ヒトが見ているオレンジから赤にかけては見えないとされています。鳥類の多くや猿は人の目に近い範囲に対して錐体が反応するとされています[図1-1]。

[図1-1]ヒトの目が色として感じ取れる領域は380~780ナノメートルの波長で、この範囲の波長を可視光線といいます。

 

ヒトの錐体には445ナノメートル付近の短波長に反応するS錐体と、535ナノメートル付近に反応するM錐体、570ナノメートル付近に反応するL錐体があり、S錐体は主に紫から青の色みを感じ、M錐体は緑から黄緑、L錐体は黄緑から赤にかけての色みをそれぞれ感じ取って、最終的に脳の中で色として判断をしているというわけです。

ヒトの錐体が色を判断するもとである光は、3種類に分けることができます[図1-2]。1つは「放射」で、これは物質の熱量が変化して生じるものを指し、燃焼によって発生する光などが代表的なものです。太陽光や蛍光灯などの光源からくる光もこの放射光と考えることができます。2つ目は「吸収・反射」で、光源から発生した光が物質に当たり一定の波長が吸収され、残りの波長が跳ね返された結果としてヒトの目に届くものをいいます。リンゴが赤く見えるのは紫から緑にかけての波長をリンゴの皮が吸収し、赤く感じられる長い波長を跳ね返すためです。紙に印刷したものを見るというのは、光源からの光を紙とインキが反射した結果がヒトの目に届いているというわけです。3つ目は「透過」で、水や空気、フィルムのように透明や半透明の物質の中を光が通過して目に届くものを指します。この場合も通過する過程で物質に特定の波長が吸収され、残った波長がヒトの目に届いて色として感じられることになります。コンピュータのディスプレイはバックライトの光がディスプレイの中にあるフィルタを透過してきたものということができます。

このように、ただ「色」といっても色として感じる範囲には幅があり、また、色を構成する光の性質には種類があるということを覚えておきましょう。

[図1-2]ヒトの目に届く光は「放射」、「吸収・反射」、「透過」の3種類に分けることができます。