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ゴルフプラネット 第20巻

【第1回】まえがき/マナーなんてクソ食らえ

2016.08.08 | 篠原嗣典

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まえがき

 

 20巻はゴルフができる幸せに感謝しようというテーマで2004年に書かれたものです。

 

 2004年はアテネオリンピックがあった年で、日本のプロ野球では福岡ダイエーがソフトバンクに、楽天が50年振りに新球団を作りました。

 個人的には、いかりや長介さんが亡くなったインパクトが1番でした。一つの時代が終わった、という感じがしました。

 

 個人的なことなんですけど、甲状腺の病気が発見できないまま悪化して、色々な症状が出て苦しんでいる状況を感じます。20巻を書いた2004年はそういう1年でもあったわけです。

 

 メールマガジンとして、Golf Planetはこの年に1000号を越えます。ちなみに、現在(2013年8月12日)は、2777号です。

 読者と共に1000号を祝おうと考えて、たくさんの読者と交流しました。結果として、戸惑ったという雰囲気も20号には漂っています。

 

 ゴルフは明文化された正しいやり方があります。

 それを広めていくことが、結果としてゴルフを楽しむための礎になるのだと、強く意識したのもこの頃です。

 

 ゴルフを末永く楽しむために、ゴルファーが守らなければならないのは……20巻を読みながら考えてもらえれば幸いです。

(2013年8月)

 

マナーなんてクソ食らえ

 

 ルールブックの最初の章は、エチケットであることは書くまでもない。知らない者同士がゴルフ場を共有しながら、楽しく安全にゴルフをする為に不可欠な礼儀が書かれている。

 

 小さな子供を諭すように、何度もルールブックを携帯しなさいと書いているのに、未だに手にしていない人(昔からゴルフではなく、ゴルフとよく似た遊びをゴルフだと勘違いしている人とゴルファーを分ける意味で『人』とゴルファーは書き分けている。意外に分からない人が多い)は、とりあえず、JGAのWebサイトを確認してみることをお薦めする。

 

 ゴルフにとって、エチケットは魂のようなもので、無くなった状態でその存在を維持することは出来ない。今年は、非常に悲しいことに、エチケット違反に対して罰則を科すことが可能になった。現代に生きるゴルファーにとって、こんな侮辱はない。『あなたたちは、最低限のことも出来ない愚か者だ』と言われているようなものだ。叱られるまで馬鹿をするのは、本来、幼い子供の特権だったはずなのだが、本当に情けない話である。

 

 しかし、うつむいてばかりもいられない。2004年は、罰則に伴って内容もより詳細になった。この機会に、エチケットをきっちり確認しておくのが賢明なゴルファーの生きる道であろう。

 

 「エチケットには違反しますけど、マナーなんで」「マナーに厳しいゴルファーになりたい」。そういうメールがたくさんくる。言葉の間違いであって欲しい、と願うしかない。

 

 エチケットは道徳。マナーは家庭内のしつけ。よい子はどちらもクリアしなければならないが、大人になればなるほど、道徳が優先されるようになるものだ。ゴルフでも同じである。

 

 強いて断言しよう。私の知る範囲で、マナーを強調する人は、かなりの確立でエチケットにだらしないダメゴルファーである。

 

 名門コースなどで、独自のマナーを押しつける所がある。バブル期まで、日本のゴルフ場は目指せ名門コースというスローガンに向かって突っ走っていたので、そういうマナーが重宝がられて、いつのまにか、エチケットよりマナーが上という間違った価値観が横行した。現代でも、社会的な地位が高いと自覚するグループでゴルフをすると、マナー馬鹿が必ず1人はいる。挙げ句の果てに、そう言う恥知らずは『俺がルールブックだ』と野球の審判のようなことを平気で言う。

 

 そのような形で間違った伝言ゲームを経てきたマナーなんて、クソ食らえである。

 

 何処の世界にいっても、エチケットさえ出来ていれば何の問題もない。ゴルフルールは、その為に世界共通なのである。

 

 考えてみて欲しい。英国で制定され、英語が原文のルールで、エチケットだけは、どうして外来語の仏語なのか?

 

 実は、マナーはほぼエチケットと同じ意味の英語である。色々な説があり、エチケットの語源がスコットランドに渡ってゴルフ用語になったという背景という説や、より注意を促す為という説や、マナーよりグローバルに同じものを使うという意味でエチケットと言う言葉の方が相応しかったという説などがある。答えはハッキリとしなくとも、エチケットを考える意味では非常に面白い疑問である。

 

 エチケットに準じてゴルフをすることは、やってしまえば意外に簡単である。少なくとも、ボールを100ヤード離れたグリーンにウェッジで乗せるよりは、遥かに簡単だ。つまりは、出来る出来ないではなく、するかしないかという話で、出来ない人などいないから強制されているのである。

 

 例えばよくあるシーンであるが、自分がホールアウトした瞬間に、「パーです」とか「ダボです」とか言う人がいる。エチケットの『他のプレーヤーに対する心配り』が分かっていない。まだ、パットが残っているプレーヤーに、自分のスコアを覚えておけよ、と言わんばかりの暴挙であり、声が聞こえないほど離れている人には分からない可能性がある。全てのプレーヤーが終わり、グリーンを離れ、次のティに向かう間で、確実にスコアを確認し合うのがストロークプレーの安心できる瞬間である。このフライング申告は、上手だと思っている人に多いので困る。私は競技ゴルフをしていた頃は、その場で、即、止めるように注意していた。緊迫し、集中しているシーンで、他人のスコアに注意を向ける余裕はないからだ。

 

 どんなスコアであれ、正しい方法で確認し合うのが良いに決まっている。妙なタイミングで申告するのは、やましいことがあると誤解を受けやすいので、百害有って一利なし、である。

 

 エチケットに精通することで、無理なわがままを通す為にマナーを持ち出す馬鹿な人に惑わされることはない。また、エチケットはゴルフの精神の源であるので、マナーの善し悪しも、ゴルフの精神に照らし合わせて判断することが出来るようになる(マナーと言われるものの中には、間違いなく良いものもある)。

 

 もちろん、ルールブックがあれば、その場でルールブックを開き、「あれ? そんなことエチケットには書いていないですね」なんて反撃も出来る。

 

 何より、エチケットを知っているゴルファーは、それだけで自然に胸を張れるようになり、プレーにも集中できる。ネットからでもエチケットがJGAのサイトで確認できる時代だ。ネットゴルファーだって出来るんだ、ということを世間に知らしめよう!

(2004年1月9日)

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