【第2回】転がし仲間 | マイナビブックス

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ゴルフプラネット 第19巻

【第2回】転がし仲間

2016.08.08 | 篠原嗣典

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転がし仲間

 

 ゴルフを始めて間もない頃、アプローチとパターを教えてくれた女子プロは、低い球で転がすゴルフなんて廃れてしまう、という考えの持ち主で、ある程度の高さで打ち出したボールがある程度の球足で転がる方法、ピッチ&ランを徹底的に私に教えた。今から25年以上前の話だ。

 

 それから約10年間、私は転がし知らずのプレーヤーだった。ほぼ全ての状態からボールを上げることを考えるのは、ある意味では集中できて良いものだったのかもしれない(グリーンのカラーなど、パターで打てるものは無意識にパターを使っていた。長いパットの距離感には大いに自信を持っていたし、カラーからアイアンを使う人はヘボだということを経験的に知っていた)。

 

 20代の半ばで、私は転がしてグリーンを攻める必要性に迫られた。小さいグリーンが二つあるツーグリーンのコースから大きなグリーンが一つだけあるワングリーンのコースへ、時代は大きくシフトし始めていた。大きなグリーンで距離感を出したり、段差のある傾斜を攻める場合にピッチ&ランでは攻めきれない時が出てきた。その時に、熟練のプレーヤーが器用にボールを転がして良い結果を得ているのを見た。

 

「パターと同じだよ」

 

 熟練のプレーヤーは質問に答えた。私は、その答えに納得できなかった。パターとは違う打ち方をしているように見えた。私は、色々な人を観察するようになった。

 

 そして、ある日、強烈なヒントを得て転がし仲間に入った。

 

 冬のコースは芝生も薄く、転がしたくなるケースが多々ある。一番簡単なのはパターである。私は冬場になると、練習場でもパターの練習をする。30ヤードとか、40ヤードとかをコーンという感じで打つのである。周囲の目を気にしなければ方向性、距離感共に、アイアンのアプローチより簡単なことが分かる。

 

 次に考えるのは、アプローチウェッジの転がしであるが、これは一般的ではないので省略する。スピンコントロールできるレベルになれば自然に出来るものである。

 

 そして、3番目が8番アイアン(時として前後1番手も使用する)である。強烈なヒントは、この8番の使い方で得たものだ。まるで、ドラマのようにヒントを得た直後の3ラウンドで、12回使用して5回もチップインした。自信を持つのに十分な実績である。私はまるで生まれた頃から転がしているような顔でゴルフ場を歩けるようになった。

 

 冬のゴルフの楽しみは、転がしを多用できるという心の余裕である。心よりそれを楽しみに思えれば、グリーンを捉える機会が増えて、結果として転がしを使わなくて済むというものだ。

 

 転がしについては、ハンドファーストにしたり、やや釣り気味にクラブを持ったりすることは、巷に溢れているレッスン書にも書かれている。この辺りは、個々で確認し、自分なりの形が完成しているという前提で書く。クラブを振り上げた時。左腕の上腕とシャフトが一直線になるように上げるのである。こうすると、少しリストを使う感覚になる。トップがそういう形になり、打つ時はアドレスの再現になれば……。

 

 たぶん、転がし仲間に仲間入りできるはずだ。もちろん、絶対的な練習量が力になる分野であることは間違いない。練習した分量に比例して上手くなるのは、転がしの特徴の一つで、ボールを上げるアプローチでは、時として、センスや才能が求められることを考えれば、非常に魅力的である。

(2004年1月15日)

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