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ゴルフプラネット 第19巻

【第3回】『当社比』の疑問

2016.08.25 | 篠原嗣典

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『当社比』の疑問

 

 ライ角を調べる時、ソールではなく、フェースのスコアラインを基準にする方法がある。ソールとスコアラインが完全に平行なら問題ないが、実際はどうなのか? という質問が来る。

 

 これは、非常に難しい話である。ソールは平らではないクラブが多く、膨らみのどこがライ角の基準になるのかは何とも難しい。つまり、最近スコアラインを基準にして測る方法があるのは、ソールの形状が複雑になったからなのである。

 

 個人的には、計測器に掛ける前に、まず重心を調べる。その重心位置の真下に印を付けて、その接点がライ角の基準として測るようにしている。評判の良いアイアンは、概ね数値通りになるので、ライ角はそのように測って欲しいのだと思われる。このことから、ライ角は打球の方向性や弾道より、芯に当たる確率を左右するという説は、大いに信憑性を高めることになる。

 

 さて、そういう中で感じるのが『当社比』とか『当社基準』である。

 

 『当社比』というのは、その会社の方法で調査し、比較したという意味。『当社基準』というのは、一般的な計測法と違うやり方でやったという意味。

 

 昔、某メーカーは、スコアラインは弾道に影響しないというテスト結果を『当社比』として発表し、フェースに溝がないアイアンを発売した。私は当時ゴルフ用品を売る店にいたが、その発表を聞き、ぶっ飛んだ記憶がある。溝がないアイアンなんて売れない……。私の担当していた店では1セットも仕入れなかったが、案の定、酷い失敗作となり、市場からは消えてしまった。

 

 確かにスコアラインは、横ではなく縦にしてもその効果はあまり変わらない。これは、実際に同じヘッドの7番アイアンで、縦ラインと斜めライン、普通ラインのものを作って、10人で打って比較したが、やや高さに差が出る程度で、あまり差がなかった。それは、私のいたショップの『当社比』である。

 

 『当社比』は、ある一定の条件では、という意味も含んでいる。

 

 ボールの飛距離がまさにこれに当てはまる。よく言われる冗句に「ボールが毎年10ヤード飛ぶようになっているので、10年後には350ヤードを越えるはずです」というものがあるが、『当社比』のマジックである。

 

 都合の良い調査結果で、消費者を騙すような『当社比』や『当社基準』は許し難い。とはいえ、多くの宣伝文句は、夢を見るにはちょうど良いものだ。ゴルフの道具を買うというのは、夢を買うことでもある。

 

 買うのは自分自身。宣伝文句がどの程度縮小しても許せるのか、よく考えて判断して責任を持って買おう。ゴルフ道具も、野菜や果物のように、季節に関わりなく市場に並んでいる。

(2004年1月21日)

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