まえがき
19巻は用具と技術をテーマに2004年に書かれたものです。
2004年というのは、技術的にはあまり変わらないことが多いですが、用具の話はかなり古い感じがするかもしれません。出てくる用具は中古ショップでもなかなか見られない骨董品になりつつあります。
そこが面白いのです。
例えば、アンカリングの話が出てきます。長尺パターが流行始めたからです。禁止すべきかどうかをこの頃に書いているのです。
400CCを越えるドライバーの話も出てきます。ドライバーの体積はどんどん増えて、現在の460CCのものが出てくるのもこの時期なのです。
セーターの話もちょっと考えさせられます。
現在、冬場のゴルフでセーターをメインできている人は少数派です。手軽に入手できる高機能のゴルフウェアがあるからです。メーカーによっては、ラインアップにセーターがないこともあります。
絶滅寸前のセーターは、昨年(2012年)からお洒落なゴルファーを中心として、復活の兆しがあります。下着タイプの防寒着の機能向上で、セーターが再注目されてきたというわけです。
19巻を読んで、ゴルフのスコアアップに役立ててもらえれば本望です。
最後に一つだけお断りしておきます。『70台の出し方教えます』という話の中に、メールをもらえれば教えると書いてありますが、これについては対応ができませんので予めご了承ください。
(2013年8月)
MP-001のフェアウェイウッド
おいおい、新年もその話かよ、と思った読者には申し訳ないが、今回もMP-001の話である。
ドライバーと同様、いや、もしかするとそれ以上に、私はフェアウェイウッドに期待していた。理由はいくつかあるが、大好きな2番アイアンをクローゼットにしまうほど満足がいく5番ウッドが欲しかったことと、信頼できるスプーンが欲しかったこと、その2点が大きな期待となっていた。
5番ウッドは、キャロウェイもテーラーメイドも試していたが、今イチで、使用するまでになっていなかった。かつて、一緒に2番アイアンを振り回していた仲間が、皆、上手に5番ウッドを使用しているのを垂涎していた。
スプーン(ここで名称について『?』と気がついた方の為にマメ知識。クリークというのは日本では5番ウッドであるが、欧米ではロングアイアンや4番ウッドとしても地域によっては使われるので、今回は5番ウッドと表記している)は、自分にとって、戦略上、ピンチを救う大切な武器だったがこれも今イチで、使用しているものに替わるものがあるのなら、すぐにでも変えたいと思っていた。低い球も打てて、そこそこ距離が出るものが欲しかった。
いずれも構えた時の安心感は欲しかった。丸い型が好きなのだが、世の中は馬面ヘッドばかりだった。MP-001は米国の雑誌などを見るとかなり良い感じに見えた。こうなってくると、問題はスペックと海外モデルと国内モデルのどちらにするかだけである。
ちなみに、フェアウェイウッドは海外仕様と国内モデルとでは、ヘッドの体積他、色々と違うということは以前にも書いた。その具体的な数値は以下の通りである。
▼欧米
ロフト ライ角 体積 長さ(DG) 長さ(Exsar)
13.5 57.5 154cc 42.25 42.75
15.0 58.0 154cc 42.25 42.75
16.5 58.5 142cc 41.75 42.25
18.0 59.0 132cc 41.50 42.00
21.0 59.5 125cc 41.00 41.50
シャフト:
.Exsar Sixty S/65g R/60g
.DG S300 R300
▼日本
ロフト ライ角 体積 長さ
13.5 58.0 165cc 43.00
15.0 58.5 160cc 42.75
16.5 59.0 145cc 42.50
18.0 59.5 135cc 42.25
21.0 60.0 125cc 42.00
24.0 60.5 120cc 41.75
(レフティモデル)
ロフト ライ角 体積 長さ(DG)
15.0 58.5 160cc 42.75
18.0 59.5 135cc 42.25
21.0 60.0 125cc 42.00
※13.5度がストロングスプーン
15.0度がスプーン
16.5度が4番ウッド
18.0度が5番ウッド
21.0度が7番ウッド
24.0度が9番ウッド
何とも複雑な数値であるが、その数値から期待する弾道を描きながら見ていくうちに、色々なことを感じるはずである。
例えば、海外モデルは芝生の違いからなのか、国内モデルよりスプーンの体積が小さい。しかし、5番ウッドからは、ほとんど変わらない。また、ストロングスプーンとスプーンは、ロフトは1.5度違うのに体積に余り変化がなく(海外モデルは同じ)、国内モデルはシャフトの長さが変わるが、海外モデルは長さは変わらない。これから推測するに、ストロングスプーンとスプーンは、最終的な性能はあまり変わらないが、個人の趣味によって選択するようになっているのではないだろうか。つまり、13.5度が必ず飛ぶわけではなく、人によっては15度の方が圧倒的に飛んだりするということである。
私は、海外モデルのストロングスプーンのカーボンと5番ウッドのスチールにした。
5番ウッドのスチールは、アイアンからの流れという意味と2番アイアンの代わりという意味で選んだ。スチールのウッドは、1980年代までは当たり前だったので慣れたものである。久しぶりの感覚で気分良く使用できた。これは、素晴らしい結果を出してくれて、もう手放せなくなった。
ストロングスプーンは、強烈な道具だった。ブンブン振り、かつ、確実に当てる技術を求められる。あまり振りすぎて、年末はひどい調子になった。当たれば飛ぶが、その確率は実戦に用いるには低すぎた。振らなければ打てないスプーンは嫌いではないが、他の番手に影響するほど振るのは問題があった。15度のスプーンのスチールにした。5番ウッドが気持ちよかったので、その感じを求めてスチールにした。結果として、この選択は正解だった。
フェアウェイウッドは、全種類を打ってはいないのでインプレッションは書けないが、悩んでいる人にとっては、たった1行の情報が悩みを解決する手段になったりすることもある。そういう意味で、悩んでいる人の支えになれば幸いである。
フェアウェイウッドは、出来るだけ簡単に狙った仕事をしてくれるものが良い道具だと言われるが、万民に通じる名器がないことは、それが使用する人間次第だと証明している。
フェアウェイウッドは、ある意味でゴルファーを映す鏡である。
(2004年1月8日)