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ゴルフプラネット 第14巻

【第3回】愛される理由

2016.08.29 | 篠原嗣典

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愛される理由

 

 セントアンドリュースのオールドコースと言えば、近代ゴルフ発祥の地、ゴルフの聖地として有名すぎるほど有名である。昨年、そのオールドコースの17番が論争の種になった。

 

 世界的に有名なコースには有名になるだけの理由がある。決してエピソードや歴史だけで世界的な名声を得ることはできない。

 

 オールドコースの17番は、パー4のホールとして特別に有名である。その理由は、パー4としての様々な限界がテストされるルーティングと、楽に逃げる事が出来るルーティングが絶妙だからだ。現代のコース設計でパー4を語る時に、この17番を知らなければモグリだとばれてしまう。

 

 17番ホールの説明をしておこう。

 右ドックレッグ。ティグランドからフェアウェイを見ることが出来るが、この方向に飛ばしすぎると突き抜けてラフにいってしまう。飛距離が出る人の選択は右に立つホテルの塀の上、つまり、ショートカットである。

 真っ直ぐ飛んだ場合は、フェアウェイに球があっても第2打目でグリーンに届かせるのが困難なほど距離が残る。第3打目勝負である。

 運良くショートカットに成功しても2打目は楽ではない。

 固い逆ハート形のグリーンの手前には、通称「マンホール」と呼ばれる人の背丈ほどあるポットバンカーが待ちかまえているのだ。

 日本人はかつて中嶋常幸プロが大叩きしたことからトミーズバンカーと呼ぶ人もいる(5回目で脱出した)。2000年の全英オープンでは、デビット・デュバルが脱出に4打を費やした。

 

 このバンカーが話題の中心である。

 昨年、2メートルを越すと言われていた深さを1・8メートルに、大きさもやや小さく改修したのである(1960年代と同じ深さらしい)。

 

 改修したことに対する評価は真っ二つである。

 年間で4万人も訪れる普通のプレーヤーがプレーしやすくなった、と賛辞する声と、不必要な易しさは不要だと非難する声である。

 

 どちらも正論であり、正解である。

 ただ、良い話だと羨ましい気持ちになるなぁ、と思ったのだ。

 

 ゴルフコースを愛する気持ちがなければ、この様な議論は生まれない。そう考えると、議論そのものがゴルフ愛に溢れたものに感じて来るから不思議である。

 よく行くコースで改修した場所がわかる幸せやそれを議論できる幸せも、ゴルフの楽しみ方の一つである。

(2003年1月22日)

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