【第2回】ある読者の初夢 | マイナビブックス

100冊以上のマイナビ電子書籍が会員登録で試し読みできる

ゴルフプラネット 第12巻

【第2回】ある読者の初夢

2016.08.09 | 篠原嗣典

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

ある読者の初夢

 

 ある読者から初夢についてメールが来た。以下は、その抜粋である。

 

 

 僕は今まで何度もプレーしたコースに立っています。一緒にプレーしているのは不思議なことに誰だか分かりませんが、人数だけは、僕を含めて3人だと理解できているのです。

 

 僕はいつも通りにボールをティアップして普通にドライバーを振ろうとするのです。しかし、体が上手く動かないのです。それでも、無理をして小さなバックスイングでえいっ、と小さく掛け声を掛けて打ちました。

 

 全く手応えはありませんでした。なのに、ボールははるか彼方のグリーンに乗ってしまうのです。380ヤードショットです。本当にジャストミートすると手応えがないのは本当なんだ、と妙な納得をしながらグリーンに向かいました。

 

 グリーンに着くと、キャディから8番アイアンを渡されるのです。キャディは、ここからだと200ヤードです、と2番ホールのグリーンを指差すのです。

 

 僕は、グリーンの芝生に傷を付けないように気を使いながら、パット程度の小さなバックスイングでボールを打ちました。ボールは2番ホールのグリーンに乗りました。またしても完全に手応えがないショットでした。

 

 そんな風にして、最大で600ヤードも飛ばし、全てのホールを回り、いよいよ18番のグリーンに来ました。キャディは無言でパターを渡します。最終ホールだけはパットをするんだな、と勝手に納得して3メートル程度のパットを打ちました。手応えがない感覚を残し、弱く打ったはずのボールはうなりを上げながら急上昇して行き、遠くに見えるクラブハウスの2階の窓に一直線。割れる! そう思った瞬間、僕は目が覚めたのです

 

 

 凄まじい初夢である。夢は大概が訳が分からないものであるが、これほどのものも珍しい。当の本人は、この初夢を分析して欲しかったらしいが、私は心理学の先生ではないので辞退した。

 

 本人の話では、オーバースイングを修正すれば、格段に腕が上がるとの暗示ではないか、と言うのである。何とも言えない……。気は心、そう信じれば正夢になるのかもしれませんね、というアドバスを送るのがやっとである。

 

 昨年の12月、妻の話によると私は夜中に何夜もうなされたという。

 

 「止まって、止まって……」

 「カップに穴がないよ……」

 

 どうやら、パットをしている夢を見ていたようであるが、私には記憶がない。夢は起きる直前に見ていたものしか覚えていないそうなので、覚えていない事に関してしかたないのであろうと思う。

 

 夢でもゴルフが出来るなんて素敵なことだと思う。たとえそれが悪夢であってもである。その意味で、初夢がどんな形であろうとゴルフだった人は、羨ましい限りだ。

 

 夢と言えば、よく聞く話は、ゴルフの前夜にゴルフに遅刻した夢を見るという話である。これが原因で、ブルーになってしまいスコアが悪かった、という言い訳をしている人に遭遇して、笑ったこともある。

 

 私は学生の頃、朝起きて、服を着替える夢を見ることがよくあった。起きた時、パジャマのままの自分を確認して、損をしたような悲しい気分になったものだ。良い夢は現実に戻ると嬉しいというより、悲しくなるし、悪い夢は現実でないことで安心できる。表裏一体であり、気の持ちようである。

 

 考え方を変えれば、ゴルフをすること自体が夢のようなものである。冷静に考えれば考えるほど、ゴルフに自らが惹かれることが滑稽に思えることがある。大の大人が1日掛けて、棒切れでボールを打っては歩いているのである。だからこそ、夢なのだ。

 

 自分ではコントロールできず、良くも悪くも信じられないことが起こる。そういう事って、年を取れば取るほど現実社会ではなくなってしまっている。そういう非現実を体験できる夢と現実が混じり合った所に、ゴルフはあると思えるのである。

 

 何も疑わず、次に起きることに期待する。

 良い夢を見たいと常に思っているゴルファーでありたい。

(2002年1月18日)

続きをご覧いただくには、会員登録の上、ログインが必要です。
すでにマイナビブックスにて会員登録がお済みの方は下記の「ログイン」ボタンからログインページへお進みください。

  • 会員登録
  • ログイン