サラリーマン残酷物語
その男は、ある大きな会社のサラリーマンである。約10年程前、お店でクラブを売る私の前に現れた時は、若手社員で部長さんのお供として現れた。「ゴルフができないなんて、お前、サラリーマン失格だよ」と部長さんに挑発されても、苦笑いしていた彼は、実は大きな秘密を持っていた。彼はゴルフを既にしていたのである。
その日、私は部長さんに必死になって新しいドライバーを売ろうと試みていた。部長さんの弱点を突き、そのクラブの機能がそのポイントを如何に補ってくれるのかを説明する。私の最も得意とする戦法だった。夢を売るのがゴルフ道具を売る仕事だと思っていた私は、その日、絶好調だった。