【第3回】片道切符 | マイナビブックス

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【第3回】片道切符

2016.08.16 | 三角みづ紀

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片道切符

 

季節のはなしはすきではないが、
初夏、襟元が汗ばむそのときに、
洗濯物を干していたらあなたが言う。
あなたが言うのだが意味がわからない。
わたしには届かない言語であるかもしれない。
あせってしまって、ほおりなげた衣類が、
布団をますます湿らせた。
発端はあなたが理解できない言語をつかいはじめたこと。
そうして鳥のように窓からいなくなって、
羽は濡れるものではない、と、
叫びながら途方に暮れた。

ますます湿りゆき
圧迫されながら
見上げる波は
到達することなく
あてのない片道切符を
にぎりしめて

夏休みはどこへ行こう
あのまぶしいさなかへ行こう
小鳥のように
泣きながら



 

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