片道切符
季節のはなしはすきではないが、
初夏、襟元が汗ばむそのときに、
洗濯物を干していたらあなたが言う。
あなたが言うのだが意味がわからない。
わたしには届かない言語であるかもしれない。
あせってしまって、ほおりなげた衣類が、
布団をますます湿らせた。
発端はあなたが理解できない言語をつかいはじめたこと。
そうして鳥のように窓からいなくなって、
羽は濡れるものではない、と、
叫びながら途方に暮れた。
ますます湿りゆき
圧迫されながら
見上げる波は
到達することなく
あてのない片道切符を
にぎりしめて
夏休みはどこへ行こう
あのまぶしいさなかへ行こう
小鳥のように
泣きながら