第四章 信玄と勘助、絶対の信頼関係──上司とのつきあい方
はじめに
長年の流浪生活時代に広めた諸国の情報などの見聞や、「城取り」のノウハウなどを信玄に逐一、レクチャーすることにより、信玄から絶大な信頼を得た勘助であるが、それらはある意味で、他国者、漂流者ゆえの知識や学問だったといえるだろう。
つまり、信玄をはじめ、武田家譜代の国人領主は、ほとんど甲斐の国以外の情勢を知らず、信玄の父・信虎時代に雇い入れた他国者の足軽大将連中も、基本的には武辺者として、採用されたわけであろうから、当時の武田家の人材において、勘助ほど他国の事情や軍事情報に通じた者がいなかったという状況は理解出来る。