まえがき
2001年に書かれた本書は、用具と技術のゴルフエッセイです。
上手くなるヒントなどは10年以上経っても十分に通じます。この機会に活かしてもらえればと切に願っております。
用具の話については、二十一世紀になった年の話として、ゴルフ談義などで使えると思います。また、ゴルフ用具の歴史の一端として考えると非常に楽しめます。
例えば、現在では当たり前に売られている60度以上のロフトがあるLW(ロブウェッジ)の話や、ドライバーのヘッド容積が300CCを超えたという話も出てきます。現在では考えられない小ささの300CCヘッドでもデカヘッドだったのは逆の驚きです。
それらは全て12年前の話なのです。ゴルフ用具は急速に変化するという証明です。
12年という歳月は干支が一回りする長いもので、読み返しながら「僕はこのクラブを使っていたんだ」と戸惑ったりもします。
歴史から現在の自分に当てはめて学ぶことは大事で、ゴルフでも楽しみながら学ぶことが重要です。
用具と技術を一つに統合して、両輪で安定させたいと願いました。読んでスコアアップするための1冊をお楽しみください。
(2013年3月)
何故にパターのグリップは膨大な種類なのか?
ゴルフ歴と使用したパター履歴は比例する人が多い。10年で20本なんて人は極端な例であるが、10年で3~5本位が一般的であると思う。
終わりよければ全て良し、などといわれるが、ゴルフプレーにおいても、やはり最後を締めくくる道具は重要なものである。ドライバーはパー3など使用しないホールがあるが、パターは基本的には全ホールで使用される道具である。
さて、パターは様々な種類があり、年間に何本も新しいヘッドデザインが発表されては消えていくことはいうまでもない。今回はヘッドではなく、そのグリップに注目してみたい。
通常のグリップは丸い形である。しかし、パターのグリップは平らになった部分があるもの、限りなく四角形に近いもの、それらの違ったバージョンと様々な形が存在する。デザインは同じでも太さが違うものもあり、その種類はざっと数えても20種類にはなると思われる。グリップメーカーが作っているもの、パターメーカーがオリジナルとして作っているもの、見ているだけでも面白いものである。自分が現在どういうものを使っているか、また、使ってきたか、その辺をもう一度確認してから、話を進めていこう。
ラインに対して平行に動かす時に、平らな面があるというのは非常に心強いものである。多くのパターが面がある形状をしているのは、そのような理由が支持されてきた結果であると思われる。
細いものと太いものがあるのも興味深い。
ここ3年で最も変わったのは、極太のグリップの登場であろう。通常のグリップの2倍はあるようなグリップは、実は過去にも登場した歴史がある。過去に出たグリップが消えてしまったのは時代の流れであると思われるが、現在流行している極太グリップと決定的に違うのはその固さである。現在流行っている極太グリップは驚くほど軟らかいのだ。持ったときに指がグリップの中に沈んでいくような感触がするのに、初めての場合は一様に驚くのではないかと思われる。
私は細いグリップが好きなので、極太を試すことはないと思うが、指がしっくりとグリップしない悩みを持っている人や、引っかけて強くボールを打ってしまう癖がある人には非常に合うグリップだと感じるので、試してみる価値はある。
グリップの好みが確定するのは、かなり次元が高い話である。私自身、細いグリップが好きだという事が分かるまではずいぶんと痛い目に遭ってきた。日本のプロやトップアマの間では、太いグリップ=上手いみたいな定石があって、何度も太いグリップに挑戦しては、距離感や方向性に自信を失っていた。結果的に、最初に使ったパターのグリップや、長く使ったパターのグリップの影響を受けて、好みは決まっていくものである。
20数年のゴルフ歴の中で、少なくとも15年間はピンのパターを使用し、ピンのグリップをそのまま使ってきた私は、知らず知らずのうちに自分のベースの中にピンのグリップを取り込んでいたようである。
昨年末にオデッセイのパターに変更し、オリジナルのグリップで2ラウンドほどプレーして出した結論は『このグリップはダメだと』ということである。指先というか、手の平というか、接している感触が大きい感じがするのである。結果的に、ただでもボールの転がりが良いパターヘッドの機能を使い切れずにプレーしていたのである。
大晦日直前、私は始めてピンパターのグリップをピンパター以外のパターに差し込むことになった。初めてなのは理由がある。今までならパターそのものを交換していたからである。今回は、ヘッドは気に入っていたのと、最初からグリップに違和感があったから交換しようと思ったのである。
海外のゴルフ事情に詳しい方なら、なるほど…… と思ったかもしれない。このピンパターのグリップチェンジは、昨年、タイガーが行い話題になったものだったからだ。当然、自分自身がタイガーと同列だとは夢にも思っていないが、最終的に同じになった。
グリップを交換して、飛躍的に良くなったのは距離感だった。左手のグリップの違和感が無く、思い通りに打てるようになった賜物である。既に、今年に入って2回プレーしていたが、特に2回目のラウンドは、久しぶりに3パットが1回もないラウンドだった(レベルが低い話で恐縮だが)。
パターは神秘のゲームである。ゴルフの中で、最も繊細でハッキリ結果が出る過酷さも持ち合わせている。
パターそのものを交換するのも作戦としては悪くないし、むしろ積極的に行うべきである。また、グリップについてもこだわりを持つべきである。
それを楽しみにするのには、知識だけではなく相当な練習も必要だ。練習を越えて、初めて分かる部分が楽しみの領域になるのである。
私はパターに悩んでいる人から、どんなパターが自分にあっているか? と質問されると、必ず同じ答えをする。
「お店に行って、最も高いパターを購入する。高額なパターに問題があるわけはないので、下手なのは自分のせいである。高い投資を無駄にしないためには、練習するしかない…… 結果的にボールはカップに入るようになる」
練習しても、結果が伴わない人へ。今回の提案である。パターのグリップを見直してみよう。軟らかい極太もあり、昔ながらの細いグリップもあり、自分に合うものがあるかもしれない。高くても数千円の投資で、とんでもない効果を得ることができる可能性がある。
(2001年1月11日)