【第3回】ターミナル・E | マイナビブックス

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宇宙船とベイビー

【第3回】ターミナル・E

2014.12.11 | 暁方ミセイ

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ターミナル・E

 

 

こんな世界が
とりあえずは、
拡がっていくのだった:


零度の雲は薄く、硬くなって、
無音の巨きさのなかを流れていた。
ごく圧迫された、
天上天下に平らかなる雲の室を、
ごろごろ、なにもなく流れていた。

後ろからの声が響いている。
あちらですこし、雲の先が尖って立って、
冷たい霧状の
板に張り付く
それぞれの形状:
X,
Y,
ヒドラ、
花火、
バクテリア、触手、
シナプス、
脳神経。
やがて見えてくる、硬く、濃度の高い水色の、
つめたいつめたい 
     雲 母 の 丘 、
おぼろげに見えてくるおのおのの
惑わされない現実
永遠のような石板が、あんなに
死んだ王たちの髭のようです。