【第1回】株式投資 | マイナビブックス

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1 株式投資

 

 本書では、他の投資対象を考えてみたいと思います。

 まず投資対象の代表選手といえば「株式投資」ですが、一言で片付けるなら、株は難しい! という事です。

 株式投資に興味のない方は流す程度で読んで下さい。

 株式投資から不動産投資に移行する話は聞いても、不動産投資から株式投資に移行した話は聞きません。この事実が株式投資の難しさを如実に語っていると思います。(私も移行した一人ですが)

 私も株大好き人間です。株式投資暦は20年近くになり、ある一時は「セミプロ」ではないか、などと勘違いしていた時期もあります。

 株というのは不思議なもので、数年のスパンで考えると勝つ事は可能です。ただ皆様の周囲に継続的に株で儲かっている人がどれだけいますか?

 株式市場にプレイヤーとして10年以上参加している人がどれだけいますか?

 長年にわたって株で、継続的に勝ち続けることは難しいのです。

 株自体はゼロサムゲームですので、全体の利益と損失の額は同じなのですが、圧倒的に儲かっている人間の数が少ない。つまり、大半の人間の負けた損失を、一部の勝った人間が謳歌しているのが、株式市場の現状です。

 不思議だとは思いませんか?

 皆様の周囲で株をする人は、大抵、日経新聞を愛読し、週間ダイヤモンドや東洋経済といった経済紙を読み、ご丁寧にモーニングサテライトやイブニングサテライトも見ている人達です。さらに言うと、事務系の学部を卒業して、会社では要職を任され、経済感覚にも優れているように見え、マクロもミクロも多少の経済は理解しているだろう人達です。なぜこの人達が株で勝てないのだと思いますか?

 これは、この人達の情報レベル、テクニックレベルが、株式市場に参加しているプレイヤーの中では下に位置するからだと思います。

 

(情報レベル)

 株式市場の売買金額における国内個人投資家の比率は約30%弱です。(売買時期によっても差があります)

 その他は機関投資家、外国人等、まあプロに近い人達です。そんなマーケットにおいて、失礼ながら、日経新聞程度の情報では遅く、情報が新聞に掲載された時が、その情報のピークである可能性も高いのです。

「情報の早さ」だけは個人では打つ手がないのが現実です。機関投資家など、その業界で必死に勝負している人達との情報の早さの違いは歴然としています。違法ですが、一生の内に何度か耳にする、「生きたインサイダー情報」を得た時、この時くらいしか、機関投資家達より早回りして株式の売買をするのは不可能だと思われます。

 情報が遅い以上、当然ながら勝てる可能性が低くなる事はご理解いただけますよね。

 

■テクニック

 古典的投資理論の一つに「ランダムウォーク理論」というものがあります。プリンストン大学のバートン・マルキール教授が提唱した『株価は酔っ払いの千鳥足のようにランダムに動く』という理論です。?

 マルキール教授によると、目隠しをしたサルに新聞の株式欄めがけてダーツを投げさせ、それで選んだ銘柄で組んだポートフォリオと、ファンドマネージャーが注意深く選んだ銘柄のポートフォリオを競わせたら、その運用成果に大きな違いはなかったという事実があるそうです。

 つまり「株価はどうなるか分からない」それが株式市場の現実です。

 ではどうするか? ある程度のテクニックを使うしか方法がないのです。

 機関投資家でもない私が、20年近くにわたって株式市場を退場させられる事なく、プレイヤーでいる事ができた理由は「ナンピン」と「アービトラージ」を駆使して、リスクヘッジを行っていたからこそ、参加し続けることができたのだと自負しています。

 

 ナンピンとは、買い建てた後に価格が下落した場合、下値で買い増しすることで、1株あたりの買い値(平均取得価格)を現在値程度まで下げる手法である

 売り建てた場合はその逆です。

 

 プロの期間投資家達にとっても、「相場の先行きが読めない」のは同じで、彼らも当然にナンピンを前提として投資をスタートします。

 私の経験で言えば、最初に相場に入る際のポジションは、使える金額の1/3までです。つまり、残り2回ナンピンが打てる状況でないと、怖くて相場に入りたくない、と思っています。

 ここで不動産投資との比較になりますが、「仮にナンピンを二回打つ」事を正しい前提とし、私の持金500万とした場合、最初に相場に参加する時の投資金額は最大170万円弱です。運よく、この株が自分にとってプラス側に二割動いたとしても、利益は34万です。500万を分母に考えると7%弱の収益です。意外と少ないと思いませんか?

 つまりリスクヘッジを考えると、投資パフォーマンスが悪くなってしまいます。

 1巻に掲載した5000万円のアパートを購入した例で、キャシュフローベースでも、年間17%近くの収益がでてたわけですから。

 

 アービトラージ(裁定取引)とは、金利差や価格差を利用して売買し利鞘(りざや)を稼ぐ取引のこと。サヤ取り(鞘取り)の事です。

 つまり「相場はどう動くか分からない」との見地にたつと、いきなりひとつの方向に「買い」なり「売り」のポジションを取るのもリスクが高い、という考えになります。

 そこで機関投資家しかり、個人投資家も「買い」と「売り」の両建てで相場に入る手法です。

 例えば、「トヨタ自動車が少し安いので買いたい」、との判断にいたったとしましょう。その際、同じような株価の動きをする同一産業内の他の会社、例にあげると「ホンダ技研工業」の株を、購入したいトヨタ株の同額相当を売り建てるのです。

 または、「トヨタ自動車株」が為替の影響を多分に受けるとの経験則から、「トヨタ自動車」株買いの、外為市場で円を買う、そういったサヤ取りのポジションをとるのです。

 

 こうする事によって、利益はかなり少なくなりますが、相場全体がどうなっても、負ける確率が格段に下がるわけです。

 この例をとっても、リスクヘッジのため、反対側のポジションを取るために、資金効率はかなり悪くなります。

 つまり株式市場に長くいようと思ったなら、リスクヘッジの対策を取る必要があり、リスクヘッジには費用がかかります。リスクヘッジ対策費用のために、本来の投資金額のパフォーマンスを必ずしも生かしきれない、といえます。

 リスクヘッジなんか考えずに、最初から500万円全額投資すればいいではないか! というご意見もあると思いますが、「株値はどうなるか分からない」ものです。

 多分、二回や三回なら、運よく勝ち続ける事もあるでしょう。でも必ずいつかは負けます。

 あるファンドマネージャーの言葉で僕自身忘れないようにしている言葉を紹介します。

「高岡さん、素人がリスクヘッジせずに株で勝ち続けるなんて、小学生が松坂からホームランを打つより難しいと思うよ」