1 管理会社と自己管理
大家さんはその所有物件を「管理会社」に全て任せてしまうか、自分自身で「自己管理」するかのどちらかを選択します。
「管理会社」の主な仕事は、賃料の管理、賃借人からのクレーム対応、退去後の原状回復作業、新規賃借人の募集活動です。
一般的に管理会社へのフィーは、賃料の5%+消費税が相場です。
「管理会社」と「自己管理」、大家さんによって選択はバラバラで、どちらがいい、とも言えません。
私の場合は、物件が首都圏あり、私が広島にいるので、現実的に「自己管理」は無理なので、永富君の会社に管理をお願いしていますが、皆様が「自己管理」できる状況にあるなら、「管理会社」は必要なのかを検証してみましょう。
■賃料の管理
私のアパートは3棟37室あり、現在35室稼働中です。毎月35人分の賃料が入ってくるわけですが、滞納する人間がいると、管理会社が催促してくれます。
ただ現実には、若干遅れて支払いする方はいますが、ほぼ全員、月末迄にきちんと支払ってくれます。そして遅れる人も、だいたい決まっています。
勿論、きちんとした連帯保証人は付けていますし、場合によっては家賃保証会社に加入してもらっています。
入居前に、しっかりとした手順をふんでいれば、家賃滞納のリスクは減ります。
「賃料の管理」は簡単な作業です。
支払遅滞者に電話を一本すれば、ほぼ解決します。電話に出ない人もいますが、連帯保証人に連絡すれば、まず解決します。
ごく稀に、長期家賃滞納者もいるようですが、しっかりした連帯保証人や家賃保証会社への加入があれば、そこから払ってもらえば、問題は解決します。
「賃料の管理」だけで考えると、管理会社は不要だと思います。
■賃借人からのクレーム対応
賃借人からのクレームは様々ですが、「エアコン、給湯器等設備の故障」「雨漏り、水漏れ等建物の傷み」など、金銭で解決できるクレームと、「隣人の騒音、迷惑行為」といった、金銭での解決が難しいクレームに大別できます。
金銭で解決できる問題は、素人でも対応可能です。
しかし、管理会社は慣れていますので、それぞれの工種別に安い業者を知っていますし、 発注量も多ければ、値引き率も大きいです。
管理会社に頼んだ方がより安く解決できるかもしれません。
金銭での解決が難しいクレームの中で、人間関係がその原因となっている問題については、管理会社に任せた方がスムーズに解決すると思います。
問題の是非が明確な場合は、きちんと話せば理解してもらえるでしょうが、双方に言い分がある場合、大家さんの立場では、どちらの味方もできません。
一般的な過去の事例などを用いて、妥結点を見つけて問題解決にあたらなければなりません。
また、理にかなっていない強引な主張をする人に対しては、法律的根拠などを用いて説得するしかありません。
これらの交渉は、素人では難しく、経営豊かな管理会社に任せた方がスムーズに解決すると思われます。
「賃借人からのクレーム対応」においては、素人でもできますが、管理会社に頼んだ方が、よりベターだと思います。
■退去後の原状回復作業
賃借人の退去後、新賃借人の入居までに、部屋を綺麗な状態に戻す(原状回復)作業をしなければなりません。
まずは賃借人退去時に立会い、部屋の状態を確認する作業から始めますが、退去日は人によってバラバラなので、副業で大家さんをする人にとっては、時間的に厳しいでしょう。
その後、修復場所を決め、内装業者、クロス貼り専門業者などから見積りを取って、原状回復工事を発注しますが、管理会社の方が、修復場所の選定が経済的ですし、安い業者もよく知っています。
また、入退去が多い3月~4月には、内装業者も忙しく、素人の依頼では、工事を引き受けてくれない事もあります。
これらを考えると、「退去後の原状回復作業」の面では、管理会社にお願いした方がいいと思います。
■新規賃借人の募集活動
物件の入居希望者を見つけてくれるのは不動産賃貸仲介業者です。最寄りの駅、近くのターミナル駅などにある不動産賃貸仲介業者に、物件資料を持ってお願いに行くことが、入居者の募集活動です。
管理会社を使っていれば、管理会社の人間がお願いに行ってくれますが、自己管理なら、自ら足を運ばなければなりません。
不動産賃貸仲介業者への入居者斡旋をお願いする作業は、専門知識は不要ですから誰にでもできます。
「目をひく物件概要」を作成するなど、少しばかりのテクニックはありますが、その程度の事はネットで検索すれば、難しい作業ではありません。
ただ本業等の兼ね合いで、土日でしか不動産賃貸仲介業者にお願いに行けない人にとっては難しいかもしれません。
不動産賃貸仲介業者の土曜日、日曜日は戦場です。早朝から夜遅くまで、お客様に物件紹介、立会いをします。また申込書が入れば、大家さんへの報告、書類対応など息つく間もなく忙しいのです。2月下旬~4月下旬迄の賃貸ピーク時には、昼食もとれない程の忙しさだそうです。
そんな時に、大家さんが自分の物件の営業にきても、迷惑でしかありません。その場は物件概要を預かってくれるでしょうが、忘れられてしまうかもしれません。
不動産賃貸仲介業者への入居者斡旋依頼は、彼らが忙しくない平日に行った方がより効果的です。
「新規賃借人の募集活動」は、平日に活動できるなら、という条件付で、管理会社は不要といえるかもしれません。