【第1回】1LDKの内見に行った。 | マイナビブックス

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1 1LDKの内見に行った。

 

 ある日曜日、大下かなえちゃんは、都内の1LDK分譲マンションを買うために、実際のマンションの内見にきた。
 彼女は新潟県出身の33歳の独身で、現在のところ将来を共にすると思われる殿方は見つかっていない。というか、ここ5年、恋人と呼ぶ事ができるような存在すらいない。
 決して外見や性格に問題があるわけではないが、少しのんびり屋だ。「みんな結婚しているから、いつかは私も結婚できるだろう」と楽観し、特に積極的な婚活をしなかった結果、ダラダラといたずらに月日が流れてこの歳になった。
 彼女は都内の短大に進学のため上京し、卒業後、都内の自動車関連メーカーに一般職として就職した。現在の年収は約350万円(賞与によって多少の差がある)で、貯金もやっと300万円を超えた程度だ。
 毎月の手取りの給与は約20万円程度あるが決して楽な生活ではない。彼女の出費内訳は、家賃60000円、ガス、水道代5000円、電気代8000円(季節によってまちまち)、ネット代4000円、電話代8000円、食費20000円、生活雑費10000円、美容、洋服代30000円、お小遣い30000円、保険5000円、預金20000円といった具合だ。

 

(下記表)
家賃     60000
ガス、水道  5000
電気     8000(季節によってまちまち)
ネット    4000
電話     8000
食費     20000(基本的に朝夜は自炊、昼はお弁当)
生活雑貨   10000(ティッシュなど)
美容、洋服  30000(美容院は二か月半に一回)
お小遣い   30000(大半が人との外食費)
預金     20000
保険     5000(生命保険等)
 
合計     200000円(大きなイベントが無ければギリギリ足りている)

 

 帰省旅費や冠婚葬祭、急な出費はすべてボーナスを取りくずしているので、ボーナスは全く残らない。
 
 なぜ彼女がワンルームマンションの購入を真剣に考えるようになったのかは、後ほど説明するとして、今日内見しているマンションの部屋は、彼女が今住んでいるアパートと比較するのも申し訳ないほど素敵だった。
 今日、このマンションに内見にきて、一通りの受付を済ますと、シュッとした感じで、自分より年下であろうデベロッパーの営業担当者が、犯罪的な笑顔で、実際の部屋を案内してくれた。
 部屋は4階にあった。エレベーターを降り、玄関の扉を開けると、正面のベランダ側の窓から、太陽の光が部屋いっぱいに降り注ぎ、とっても明るい部屋というのが第一印象になった。
 玄関の横には天井まで届く靴箱があり、スライド式に下りてくるため、数十足の靴が入る事は容易に想像できた。
 キッチンはオープン型カウンターキッチンで、シンクも広く、とても明るく、作業しやすそうなキッチンだった。
 バスルームやパウダールームは小さいながらも、白を基調としたスタイリッシュなものだった。
 ベッドルームにも日の光が降り注ぎ、明るく開放的なレイアウトになっていた。
収納も、クローゼット、キッチン収納、パントリー、リビング収納、廊下収納と、一人暮らしには十分すぎる程の収納になっていた。
 広さは35㎡ながら、とても広い1LDKのように感じられ、これという欠点が見つからず、「こんな素敵なマンションに住みたい」と強く強く思った。