【第1回】プロの不動産屋の見解 | マイナビブックス

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10 プロの不動産屋の見解

 

 かなえちゃんのお馬鹿な勘違いをあざ笑うかのように、和田の態度は紳士だった。ファミレスまでの道中は、冗談交じりの軽い話をしてくれた。自分の失敗談で和やかな空気も作ってくれた。
 そして、かなえちゃんのアパートの近くに彼の実家があり、そこに母親が一人で住んでいるので、休日は必ず様子を見に行っている話も聞いた。
 かなえちゃんは恥ずかしくなった。自分の馬鹿さ加減に。自惚れてた自分のハシタナサに。
 和田は全く自分の事を口説くつもりなんか無く、ただ実家の母親の様子を見たいがために彼女を最後に送り、今日も迎えに来てくれたのだ。
 
 最初から打ちのめされた気がしたが、勇気を持って和田に相談した。
「マンションを買うべきか否か」
 和田は答えにくければ答えなくていいよ、と前置きをして、彼女の年収や現在の家賃等々を聞いてきた。その紳士的な対応に、彼女は自分の事もすべて話した。
 
 彼は目を閉じて、じっくりと考え、こういう言葉を口にした。
「あくまで、賃貸とマンション購入という二つしか選択肢が無いのだとしたら、かなえちゃんとっては、マンションを買う方が、得をする確率はかなり高いと思うよ。」
との見解だった。
 なぜ断然に買う方がお得なのかというと、
 
・賃料は払ったら終わりだが、マンションを購入して銀行に返済するお金の一部は間違いなく自分の資産になっていく
・東北の復興、オリンピックのためのインフラ整備により、建設業界は作業員が極度に不足しており、建設単価は急上昇している。今後数年間、マンション価格は上がる。
・価格が上がる以上、数年後に売却したならキャピタルゲインを得る事ができる。
・環境は人を変える。ボロアパートでひけ目を感じながら生活するより、同世代の女性が未来に向かって生き生きと生活しているマンションに住んだ方が、非科学的な話ではあるが、より人間らしく、健康な生活ができる。
・お金を借りる事ができないのならしょうがないが、「お金を借りる事ができる」という恵まれた環境を活かさないのは損だ。
 
 これが和田の見解だった。