【第2回】プロの不動産屋の指南 その1 | マイナビブックス

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11 プロの不動産屋の指南 その1

 

 かなえちゃんは、和田の言葉を理解したし、共感もした。ただ彼女が一つ気になっていたのは、和田が冒頭に「二つしか選択肢が無いのなら」と前置きをした事だ。
 もっといい選択肢があるなら、話してくれても良さそうなものだが、和田はその事については触れてこない。なぜなのか???
 非常に聞きにくい雰囲気ではあったが、恐る恐る、「他の選択肢」について質問してみた。
 和田は少し困った表情をして、それからゆっくりとした声で答えた。
「ここからの話は私の私見です。そしてリスクも当然にあります。その事を理解した上で聞いていただきたいのですが、なぜ賃貸アパートに家賃を払うか、持家を買ってローンを払うか、という二つの選択肢しか無いのですか?」
「私なら、せっかく銀行がお金を貸してくれるのなら、投資用のマンションを幾つか買って、そこから賃料収入を得て、そのお金で贅沢を考えます」
 この和田の言葉は、かなえちゃんにとっては青天の霹靂だった。
「まさか私が賃貸収入を得る大家さんになるなんて!!」
「普通のOLの私には無理な話よ!!!出来るわけないよ!!」
 そんな風に考えたが、和田の顔は真剣だった。
 和田の見解によると、住居用と違い投資用のマンション購入における銀行融資は、OLでも最大で年収の10倍位の借入が可能だそうだ。
(本人の属性や金融機関の方針によって倍率は様々なので注意が必要)
(また移住用と違い、投資用マンションの金利は2%前後になることが多い)
 
 そして和田が考える、ベストな投資方法がこんな感じになる。
 
中古マンション購入 一部屋約2500万円 表面利回り約9% 
(借入)金利2% 25年 2300万円借入
 
この場合、購入費用は物件価格2500万円+仲介手数料他約100万円=2600万円
預金の300万円を頭金として使うと
借入額は2600万円‐300万円=2300万円
 
(支出)
月々の銀行返済額  97000円
管理費、修繕費   15000円
月合計112000円 年間1344000円
 
(収入)
2500万円×9%=2250000円
入退去時の空室リスクを見込んで、
2250000×90%=20250000円
 
(収支)
202500000円‐1344000円=681000円
机上の計算ではあるが、毎月5万6千円程度のキャッシュが生まれる。
 
 さらに和田は続ける。
 かなえちゃんの今の家賃が60000円なので、25000円高い85000円の家賃のマンションに住んでもまだ30000円以上の現金が残る。
 また、自分の住まいが賃貸マンションである以上、過敏なまで傷の心配もしなくていいし、飽きれば引っ越せばいい。結婚が決まっても何の問題もない。そしてマイホーム同様に、銀行返済分の一部は、確実にかなえちゃんの資産になっていく。
 この方法の方が、よりお得感があるし、精神的にも、持家の重圧に苦しまなくてすむ、というのが和田の考えだった。
 ただし、この投資にはリスクもある。
1.設定家賃が高すぎて賃借人が付かないリスク
2.修繕費が不足していると追加徴収される
 これらのリスクがある事も事実であるため、和田はかなえちゃんに話すのをためらったのだ。