【第9回】クロカンブッシュ
2017.01.13 | 川口世文
9 クロカンブッシュ
「それでどうなったの?」
JR桐生駅から、一ノ瀬舞衣の披露宴が行われるレストラン〈ラ・ストラーダ〉に向かうタクシーの後部座席で、花梨は一ノ瀬恵梨に向かって訊ねた。
「どうなったって、何が?」
恵梨はとぼけている。電車のなかでもずっと話があちこちに飛んでばかりだった。
「競馬の結果に決まっているじゃない──勝ったの?」
「ねえ、競馬って一日に十二レースもあるって知ってた? 午前中から一日中、ひたすらやっているの。だからチャンスは十二回もあったわけ……それで何勝何敗だったと思う?」
「わからない……全部的中なんてことはないでしょ。もしそうだったら、エリー、そんな顔していないもんね」
花梨がそう答えると、恵梨は「バレたか」という顔になった。