クリエイターインタビュー 英 勉 (映画監督)


201年9月19日より公開される映画『ヒロイン失格』は同名人気コミックをこれまでにないスタイルで実写化したユニークな作品だ。Creative Nowでは、同作を監督した英 勉氏にお話を伺いました。

 

英 勉 (映画監督)
1968年 京都府出身。東北新社入社後、1996年よりCFディレクターとして数々のCFを手掛ける。2008年『ハンサム★スーツ』で映画初監督。その他の監督作品に『高校デビュー』(2011年)、『行け! 高校演劇部』(2011年)、『貞子3D』(2012年)、『貞子3D2』(2013年)などがある。2013年からはテレビ番組『リアル脱出ゲームTV』などの演出も手掛ける。最新作『ヒロイン失格』が2015年9月19日より公開。

 
──『ヒロイン失格』のどのような部分に魅力を感じて、映画化しようと思ったのでしょうか。
 
「原作を読んで、王道ラブストーリーの中に新しさを感じたんです。ヒロインは恋愛を知り尽くしていて自分をそのヒエラルキーの頂点に置くような事を言っているのですが、実はぜんぜん違う純情な女の子です。物事をクールで客観的に見ているつもりが、実は暑苦しくて超主観的ですし……。そのキャラクターや物語の構造をしっかりと映画で描いてみたいと考えました」
 
──本作では、漫画的な描写が実写で表現されるという特異なビジュアル表現がなされています。このギャグ描写のさじ加減も難しかったのではないでしょうか。
 
「僕自身は単なるコメディではなく、しっかりとしたラブストーリーを作ろうと思っていたので、漫画的なギャグの映像表現に関しては一定のルールを守りました。この映画では、実ははとりというヒロインの視点や妄想から発生した漫画的描写のみを映像にしているんです。他のキャストの視点や映画制作者側が盛り込んだギャグ描写はないんです。そういうルールは守っています」
 
──そういった実写シーンを演じる役者さんたちは、かなり大変だったのではないでしょうか。
 
「例えば”ショックを受けて廊下の向こうまで吹っ飛ばされる”という描写に関して、演技で悩むというより『これどう撮るんですか?』と質問されたことはありましたね(笑)」
 

映画『ヒロイン失格』
同じ高校に通う幼馴染み松崎はとり(桐谷美鈴)と寺坂利太(山﨑賢人)。はとりはいつも自分を人生のヒロインに見立て、いつか自分と利太が結ばれると確信している。ところが、ある出来事をきっかけに利太は超地味な女子 安達未帆(我妻三輪子)と交際することになってしまう。そんな中、ヒロインの座を取り戻すため奮闘するはとりの前に、超絶イケメンの弘光廣祐(坂口健太郎)がアプローチをしてきて……。幼なじみの利太か、学校一のモテ男 弘光か、まさかの三角関係が始まってしまう。
(C)2015 映画「ヒロイン失格」製作委員会(C)幸田もも子/集英社

 
──本作には桐谷美鈴さん、山﨑賢人さん、坂口健太郎さんなど若手の人気キャストが多数出演しています。アイドル映画というか、デート映画的な側面も必要な作品だと思うのですが、その部分で意識されたことはありますか。
 
「そういった部分ももちろん意識しました。この映画でこれまでで一番可愛い桐谷美鈴を撮り、これまでで一番かっこいい山﨑賢人や坂口健太郎を撮る。それらは心掛けていましたし、達成した自信はあります。また、恋愛映画としても、『かつてない恋愛映画が誕生』と宣伝にも書いてありますが、それも自信がありますね」
 
──英監督はデート向け、若者向けのコメディ映画が得意という印象があるのですが、ご自身ではどのようにお考えでしょうか。
 
「僕自身、沢山の人が観る映画やデート向けの映画が大好きです。超大作やアート作品だけでなく、こういった気軽に皆で観れる映画は必要なものですし、これからも撮っていきたいと考えています。ただ、自分の作品をコメディ映画とカテゴライズした時点で、非常に面白くないというか限定的な印象になってしまうと思います。僕は監督としてコメディ映画というジャンル自体には興味はないんです。映画、テレビ、Webなど映像の発信形態や物語のジャンルとは関係なく、面白い企画をやりたいだけなんです。例えば過去に監督した『貞子3D』にしてもホラー映画だから監督したのではなく、3Dという部分で監督したいと思ったんです。『貞子3D2』も映画の鑑賞中に、内容と連動して観客の携帯電話に電話がかかってくるという企画が面白かったので監督しました。『ヒロイン失格』の場合は、新しい恋愛映画という部分に惹かれたんですね」
 
──次はどのような作品を撮りたいですか。
 
「企画が面白ければどんな作品でも撮りたいのですが、『ヒロイン失格2』は是非撮りたいですね。『2』ではワーナーブラザーズのマークをハートマークにしたいんですよ。今回もやりたかったんですが、本国に許可の問い合わせすらしていただけなかったんで(笑)」
 
──英監督はアマチュア時代から映画を撮り、それからCF監督になり映画監督になりました。この過程で、英監督自身が心掛けてきたことなどがありましたら教えてください。
 
「あまり肩書きにはこだわらないということですね。僕の場合、自分が興味ある面白い事に積極的に関わっていたら、職種がたまたまCF監督や映画監督になっていたんです。若い人で『映画監督になりたい。CF監督になりたい』という人も多いと思うのですが、僕はそういった肩書きよりも、何にどう関わっているのかが大切なのだと思います。極端な話、面白い映像を撮ったり、それに関わっているなら、映画監督ではなくで、近所の面白いおじさんでもいいと思うんですよ」
 
映画『ヒロイン失格』は2015年9月19日より全国ロードショーです。

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