【人気連載第3回!】将棋ガールズ  | マイナビブックス

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【人気連載第3回!】将棋ガールズ 

2015.06.05 多々納光

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ここでは青山学院大学将棋部に所属する現役女子大生、多々納光さんによるエッセイを掲載します。毎週金曜日更新予定です。
今回は第3回分を掲載します。 
→第1回分はこちら
→第2回分はこちら

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将棋ガールズ  ~青山学院高等部へ~




公立中学から高校受験をパスして、青山学院高等部に合格した時は本当に嬉しかった。高校入試が終わった2月末に、受験勉強で一年近く休んでいた棋友館に挨拶に行くと、間もなく開催された小田切先生主催の杉並区小学校将棋団体戦で、スタッフとしてお手伝いをすることになった。

大会も無事終わって、受験の報告話をするうち、塚田泰明九段が青山学院高等部のご出身であることを知った。塚田先生の娘の恵梨花さんは、棋友館で一緒に将棋を習っている将棋仲間だったので、塚田先生も高群佐知子先生もときどき棋友館に指導のお手伝いにいらしていた。恵梨花ちゃんは、今はステキな女流プロ棋士になったが、その当時はまだ小学5年生で、将棋は始めてからそれほど経っておらず、たぶんまだ級位者だったと思う。でも上達スピードが半端なく速くて、2~3年であっという間に強くなり、気がついたら女流棋士になっていた。やっぱりDNAが違うんだろうな…。


※杉並区小学校将棋団体戦

塚田先生は高校生でプロ棋士になっていたため、青山学院高等部から青山学院大学へは進学しなかったと伺った。すでにプロ棋士で多忙だった先生は、わざわざ大学へ行っておこうという気持ちもなかったとおっしゃったが、その頃は将棋のプロ棋士が大学に進学するのはごく稀だったらしい。大学なんかに行っている暇があるなら、将棋の勉強をしなさいという師匠も多かったそうだ。将棋界はそういう意味では古くて硬派で神聖な世界だったのかもしれない。春が来て私はとにかく青山学院高等部に入学した。

4月のある日の昼休み、青学高等部に入学したばかりの私の教室へ、中等部から進学してきた違うクラスの同級生の井坂・古寺・リサの三人が訪ねてきた。三人は中等部で将棋部仲間だった。井坂・古寺の男子二人では初対面の私に声をかけづらいのでリサも連れてきたのだという。古寺は将棋盤と駒を腕にかかえて立っている。
「ひかるちゃん?将棋指すんだよね?いまって時間ある?」
「どうして私が将棋をすることを知ってるの?」
「いきなり来たから、びっくりしたかな?う~んと、今でなくてもいいんだけど。」
「ネットで名前を調べたんだ。だから、うちの高校に入学することがわかった。どのくらいの棋力なのか、ちょっと知りたいと思って…。」
高入生の私は当時アウェーな感じで、すでに仲良しの友達がたくさんいる附属の中等部から進学してきた生徒達と早く馴染みたいと思ってけっこう必死だった(多感なお年頃だったので)。だから、昼休みはおしゃべりと友達作りのチャンスと思って気を遣いながら、過ごしていた。それなのに、一局指し終わるのに時間が掛かる将棋の対局のために大切な勝負の昼休みを費やすなんてできなかった。
「ごめんね。こんどにしてくれる?」
と答えちゃったけど、3人ともあのときはごめんなさい(笑)。

青山学院中等部には将棋部があり、顧問の先生の指導と引率のもと、楽しく部活に勤しみ大会に出るなどの活動をしていたそうだ。日本将棋連盟から中等部将棋部へはプロ棋士の滝誠一郎先生が派遣されていた。そして将棋部の生徒達を指導していたとのことだが、私は高等部から入学したため、中等部での活動の様子はその三人の同級生にあとになって聞いた。私も高校生になってから、将棋の相手をしに、たまに中等部の部活を訪れた。高校でも続けてほしいな、将棋仲間になれたらいいな~と思って。


※高校時代の多々納さん