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鈴木記者のチョイネタばらし「升田賞座談会 創造の原動力」を一部公開!

2015.05.20 | 鈴木健二

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みなさま、こんにちは。
将棋世界編集部の鈴木です。

将棋世界6月号の最後のページで予告した、升田賞受賞者による座談会「創造の原動力」。5月5日に佐藤康光九段、藤井猛九段、菅井竜也六段に集まっていただき、「新手誕生のプロセス」、「新戦法の誕生秘話」、「コンピュータ将棋の序盤力」など、さまざまな話題について熱く語り合ってもらいました。



独創的な戦法を続ける佐藤康光九段


序盤のパイオニア、藤井猛九段


数々の新手を編み出し、第21回升田幸三賞を受賞した菅井竜也六段

まだ編集中なのですが、本日は特別に一部を抜粋して公開しちゃいます。
(ただし、発売後に順序に沿ってまとめて読みたいという方は、我慢して読まないでください)

水面下の研究

菅井 例えば藤井システムで、「自分の中ではこれが嫌だけど、みんなの中ではそう思われていないから、まあやってみようか」みたいなことはありますか。
藤井 それはある。「この変化は嫌だな」というのはたくさんあるけれど、みんなは主流の変化をやってくるので実戦には現れない。だけど気持ちの中で課題としてとらえ、水面下では研究を続けていますね。当面の間に出てきそうなのを重点的にやって、いずれ出てきそうというのにも備えて手広くやっている感じだけど、昔から常に不安な変化だらけですよ。
佐藤 僕は戦法を散らすタイプなので、「ちょっと嫌だな」という予感があるときは他の戦法を考えたりしますね。だけど、嫌な変化は必ずありますよね。全部の変化で自信があるとか、あり得ないでしょう。それは「最後は自分が勝つ」というのと同じで単なる自信家ですよ(笑)。ただ、若いときはいまよりは、そういうことを気にしていたかもしれませんね。いまはもう来たらしょうがないかと開き直っているというか(笑)。
藤井 確かに段々不安に慣れてくるというか、仕方がないと思えてくるね。
菅井 自分は「いい勝負」だと思えばやるのですが、「少し不利」と思う変化があればできないですね。
佐藤藤井 若い、若い(笑)。
藤井 確かに若いけど、そういう細かい気配りは大事ですよ。
菅井 若いですか(笑)。でもそう考えると、できる戦法がほとんどなくなってきますよね。仕方がないから、はやっていない変な方向の研究ばかりして、誰も入ってこないのに、「やっぱりこの変化は自信ないな」とかで封印したり(笑)。

このような感じで座談会は大盛り上がりとなり、全3編で掲載することになりました。
第1回掲載分の中で個人的に最も印象的だったのは、「最近は角換わりや横歩取りばかりで、前例を踏襲する(なぞる)将棋が多いのでは」という話の中での藤井九段の言葉です。こちらも紹介いたします。

藤井 これは実はね、棋風というよりは「スタイル」が同じ人が多いからなのですよ。将棋界は長らく羽生さんがトップに立っていますよね。羽生さんは序盤が本筋追求型で、中盤は効率的な指し方をして、終盤は鬼のように強い。ある意味、「完璧な将棋指し」みたいなスタイルを確立してしまった。みんなこどもの頃からその姿を見ているので、どうしてもそこを目標にしてしまう。本当はそれが、「打倒、羽生!」となればいいのだけど、「羽生さんみたいになりたい」と、見習ってしまう人が多いのだよね。そうすると、先手のときは角換わりのように、有利さを発揮しやすい「勝てる定跡」を採用する。後手のときは相手の注文はなるべく受けずに反発して、横歩取りのように理論的というよりは「実戦的」な戦法を指す。「自分さえよければいい」と思っているかどうかはわかりませんが(笑)、そういう「いけてるスタイル」の人が多い以上、なぞり将棋が増えるは当然ですね。

とても面白い話を、山ほど聞くことができました。
初回掲載の将棋世界7月号は、6月3日発売予定です。どうぞお楽しみに。