情報よりもインスピレーション|MacFan

アラカルト FUTURE IN THE MAKING

情報よりもインスピレーション

文●林信行

IT、モバイル、デザイン、アートなど幅広くカバーするフリージャーナリスト&コンサルタントの林信行氏が物申します。

座右の銘は「情報よりもインスピレーションを与える存在になりたい」だ。「情報は新旧や正誤、伝播力の有無に関わらず消費されてしまうものだが、インスピレーションは血肉となって受け手に残る」。今、私のツイッターアカウントには、こんな言葉が固定ツイートになっている(ただし、打ち間違えた状態で…)。2016年師走、ツイッターで「それ、私も知っています」「ちなみにそれは~です」といった情報自慢のやりとりを目にしてツイートした。

我々日本人の多くは知識詰め込み型教育の影響を受けて育っている。教科書や参考書に載っていることをたくさん知っていればテストの点が上がり、内申書の成績が上がり、入試にも通りやすい。

記憶すれば記憶した分だけ褒められるという餌付けを続けられてきたことで、やたらと細かいところまで知識を溜め込み、その分野のオタク道を極める人も多いが、これも知識教育の影響と無縁ではないだろう。そもそも自分はオタクではないと思っている親でも、子どもが「機関車トーマス」や「ポケモン」の種類をたくさん覚えるとつい褒めたくなる。

‘90年代、私は雑誌の企画会議に積極的に関わっていたが、ここでも「便利な技50」とか、「~をするための20の方法」など情報を量り売りするようなタイトルの特集の人気が出やすかった。この傾向は21世紀の今でも変わっていない。今でもソーシャルメディア界隈でバズる記事というと「~する人は入れたい50のアプリ」などが多い。おそらく、ほとんどの読者はそんな情報を仕入れたところで実際には使わないどころか覚えてすらもいない。

情報過多の現代は、覚えておくのではなく、必要になったときに検索して見つけるほうがいい。今必要なズバリの情報が得られるし、情報の日付に注意しながら検索すれば賞味期限切れの情報に惑わされずに、最新情報を得ることもできる。

また、これからは、情報は検索をしないでもAIに聞けばわかる時代になり、やがては必要になる前にAIが先回りして準備してくれる。それにも関わらず、多くの人は20世紀の因習で今でも情報の備蓄量が多いほうが良いことだと思い込んでしまう。

 

 

Nobuyuki Hayashi

aka Nobi/デザインエンジニアを育てる教育プログラムを運営するジェームス ダイソン財団理事でグッドデザイン賞審査員。世の中の風景を変えるテクノロジーとデザインを取材し、執筆や講演、コンサルティング活動を通して広げる活動家。ツイッターアカウントは@nobi。




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