iPhoneの保護ガラスと『スティーブズ』へのこだわり|MacFan

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iPhoneの保護ガラスと『スティーブズ』へのこだわり

文●編集部

スペシャリストたちのAPPLE CROSS TALK

iPhoneの保護ガラスと『スティーブズ』へのこだわり

(写真左から)『スティーブズ』原作者 松永肇一
アクロキューブ株式会社 水間敏隆
漫画家ユニット うめ(妹尾朝子、小沢高広)

 

 

アップルとの出会いと『スティーブズ』誕生秘話

水間●皆さんとアップルの出会いはいつだったのですか?

小沢●大学をやめて表参道で働き始めた頃、Macintosh IIfxでした。自腹で買ったのはPower Mac 7500が最初です。現在の仕事場ではiMacやらMac miniが並んでいますよ。4人しかいないのに8台くらい稼働しています(笑)。

水間●いつ頃から漫画制作にMacを?

小沢●2004年です。漫画って単純作業が多いんですよ。枠線を描くだけで一人のスタッフが一日かけたりする。こんなのは機械に任せないといけないと思いました。

松永●私は大学生の頃でしたね。秋葉原に通うようになってApple Ⅱのことを知りました。当時はApple Ⅱより高機能な互換機もあって、買って遊んだりしていました。富士通に入社してからは最初のボーナスでMac Plusを買いました。

妹尾●水間さんのアップル歴は?

水間●私は松永さんより一つ年上で、やはりApple Ⅱを使っていた世代でしたね。1978年に日本に入ってきたときにすぐ使い始めたんです。たぶん日本で一番早いユーザだったんじゃないかな(笑)。実はそのときはサンリオでデザイナーをやっていたんですよ。

小沢●へ?! 今とまったく違う業界ですね。

水間●銀座でギャラリーなんかも経営していて。その後はデジタルコンテンツを扱うロスの外資系企業で働いたのですが、一度すべてを失ってしまった時期があったんです。どうせ再出発するんだからやりたいことをやっちゃおうということで、誰もやっていなかった保護ガラスを作ることにしました。でもまだ足りない!ってことで素材ガラスそのものを生産するアクロキューブという会社を仲間が作っちゃったんです。

妹尾●すごい! どんな会社なのですか?

水間●社名のアクロ(ACRO)は最上、キューブ(CUBE)は三乗を意味しています。アップル製品のように唯一無二で、それこそ世界高品質の保護ガラスを目指しています。現在販売している「ヤタガラス(YATAGLASS)」は次世代の強靭保護ガラスで、強度や飛散防止処理、レスポンス性能、指紋&汚れ付着防止効果、吸着性等、どれをとっても業界ナンバー1だと自負しています。市販されている多くのスマホ用保護ガラスのガラスは海外の製造メーカーのものを使っているんです。でも、私たちはこだわり抜いてガラス自体を自社開発しています。

小沢●すごいこだわりですね。

水間●スティーブ・ジョブズのガラスへのこだわりは尋常じゃない。

私たちも彼と同じこだわりを持ちたいと思っているんです。ところで、皆さんが『スティーブズ』を描かれることになったのはどんなきっかけなんですか?

妹尾●実は私、ジョブズのことを知らずに過ごしてきたんです。『スティーブズ』は松永さんが趣味で原作を描かれていたものを漫画化した作品なのですが、そのときも「ジョブズってどんな人ですか? 写真をください」ってお願いしてしまったくらい(笑)。

水間●松永さんとお二人が知り合ったのは?

松永●富士通の社内ベンチャーからスピンアウトした会社に移った頃に小沢さんと知り合ったんです。

小沢●きっかけは「ぷよぷよ」というゲームの開発に携わられた米光一成さんのワークショップ「デジタルコンテンツ仕事術」でしたね。僕と松永さんは一期生で、ほかにも変な人がたくさんいました(笑)。そこからのお付き合いだから、15年近くです。

松永●あるとき、同人誌を作ろうという話になり、ジョブズの小説を書き始めました。最初はまじめに書いていたのですが、だんだんジョブズが密室事件を解決したり、ゾンビに襲われたりする展開になっていったんです(笑)。それを読んだ小沢さんが喜んでくれたのが漫画化のきっかけですね。

 

ジョブズのこだわりが漫画に与えた影響

水間●皆さんは『スティーブズ』を制作していく中で、ジョブズのこだわりを改めて感じるようなことはありましたか?

妹尾●まさにそのこだわりに苦しめられました(笑)。たとえばApple IIって筐体の角が丸いでしょう。作画ではそれが辛くて。

水間●角の丸さ、ですか。

小沢●うちは作画に3DCGを使うんですよ。Apple IIもポリゴンで作ったのですが、データ上で角を丸めるにせよ、作画の段階で角を削るにせよ、工程が一つ増えてしまうんです。

水間●ああ、なるほど!

妹尾●なんでApple II は角が丸いのかってアシスタントに責められます(笑)。

松永●ジョブズのこだわりって禅的ですよね。ガラスが好きなのもそういうことだと思うし、角を丸くするのも面取りするのもミニマリズムですよね。

小沢●究極のiPhoneはたぶん一枚のガラス板なんでしょう。

水間●では、『スティーブズ』に対する皆さんのこだわりは?

小沢●『スティーブズ』に限らずですが、ウチは、一旦フィックスしてからのちゃぶ台返しは多いほうですね。ジョブズ流の「作り直し」に近いかもしれない(笑)。

水間●ちゃぶ台返しというと?

小沢●漫画はまず雑誌に載ってから単行本になります。雑誌の段階で出来る限りのことはやるのですが、単行本にするときに気に入らないところが出てくるんですね。

妹尾●媒体が変わると間とかテンポとかに粗が見えてくるんですよ。

小沢●単行本にするとき、160ページ中、100ページを直したこともあります。版を作るだけで大変だから出版社の編集者と営業に怒られるんです(笑)。

水間●それは大変ですね。

小沢●『スティーブズ』の場合は、読者もアップルファンが多いから、雑誌に載ったときに「ここが違いますよ」と指摘してくれるんです。さらに、どうしても見つからない資料を読者が持っていて提供してくれたりする。それを反映して作品のクオリティも上げました。

松永●原作を書くうえでは、本当にあったことは動かせません。ただ、史実として明らかにされていない部分は話が面白くなるように解釈して創造しています。

妹尾●それこそ登場人物の何年何月に何があったか、そうした細かい年表を松永さんと一緒に作って、出来事のない空白の時間を見つけて漫画だからこそできる表現を盛り込んでいます。

水間●これからの展開についても教えていただけますか?

小沢●今は『スティーブズ』の翻訳プロジェクトをクラウドファンディングで進めています。1巻は終わったので、これをアメリカでどう売っていくかを考えています。

松永●私は、次にジョブズが亡くなったあとの話を書いてみたい。

水間●それは興味深いですね!

妹尾●水間さんは?

水間●ガラスで世の中を変えたいです。ジョブズ大好き人間の方にも喜んで使ってもらえる、そんな最高の保護ガラスを極めたいと思います。

 

 

水間敏隆

アクロキューブ株式会社開発責任者。グラフィックデザイナー、現代美術のギャラリストを経てモノづくりの世界へ。

 

 

小沢高広

漫画家ユニット「うめ」の演出・シナリオ担当。20代前半までデザイン事務所で勤務後、妹尾氏と「うめ」を結成。

 

 

妹尾朝子

漫画家ユニット「うめ」の作画担当。1998年および1999年に、ちばてつや賞に連続入選を果たし、2001年に大賞を受賞してデビュー。

 

 

松永肇一

『スティーブズ』原作者。大学卒業後、富士通を経て株式会社ライフメディア社に移籍。現在はWEBアプリケーションを開発するエンジニアでもある。

 

 

アクロキューブが開発した世界最高品質の保護ガラス「YATAGLASS」。ノーマル、アンチグレア、ブルーライトカット、のぞき見防止の4タイプがiPhone向けに発売されています。URL:https://www.acrocube.jp

 

 

スティーブ・ジョブズとスティーヴ・ヴォズニアックというAppleを作った世界一有名な2人の"スティーブ"を主人公にした漫画『スティーブズ』。全6巻が発売中。