売らない売り込み|MacFan

Mac Fan編集部ブログ Weekday Mac Fan

売らない売り込み

Mac Fan編集部のブログ記事です。

『モチベーション3.0』などで知られるダニエル・ピンクの『人を動かす、新たな3原

則』を今読んでいます。ネットで何でも買える時代にセールスパーソンはこれから必

要なくなると思いきや、実はセールス業に従事する人は世界的にも年々増えている。

また、実際に物を売るのではなく、多くの現代人は他人を動かしたり、同意を求めた

り、なにかしらの「売らない売り込み」に時間を費やしている。セールスパーソンが

復活した今こそ、セールス取引の金言として新たなABC「同調(Attunement)」「浮

揚力(Buoyancy)」「明確性(Clarity)」が必要と説いています。

「同調」では、今の時代に人を動かすうえで不可欠な「視点取得」について説明して

いて、中でも1980年代以降の社会心理学者が使っていたテクニックが興味深い。相手

に「自分の額にアルファベットのEを大文字で書いてほしい」と頼んだとき、さて相

手はどうするか? 自分に読めるように書いてくれるのか、否か? 頼む前に何かし

らの力を付与された人(自分は力を持つという感覚が強い人)の場合はそうでない人

より、3倍も自分志向で(相手に読めない向きで)Eを書いたといいます。これをセー

ルスに置き換えると、売り手があらゆる情報(力)を持っていた時代はいいものの、

それが買い手に渡っている現代は逆方向の視点取得こそが大事であると、端的にいえ

ば「ユーザ視点に立て」という話につながるのですが、このように書かれるとあらゆ

る状況下において果たして自分が相手に読めるEを書いているかどうか…。最近バグば

っかりのOSを出すアップルに文句を言いたかったのですが、ちょっと自信がなくなり

ました。

と、こんなことを書いたのは、ちょうど昨日、本誌12月号(10月29日発売)からスタ

ートする三橋ゆか里さんの連載記事を読んだからでもあります。そのタイトルは「あ

なたの『誰か』に顔はありますか?」。三橋さんはITベンチャーを経て、現在は米国

LAに在住しているライターさんで、映画「ソーシャル・ネットワーク」の字幕・吹き

替えの監修に携わったことでも知られます。彼女いわく、「世のため、人のためとい

われてもなんだか漠然としていてピンときません。世は大きすぎるし、人も多すぎる。

人は、顔が思い浮かぶ誰かのために動く」。まさしく、そのとおり。だけど、普段の

行動でそれが果たしてできているか? 自分の場合、その顔の一番は読者の皆さんと

いうことになるのですが、今一度、逆のEを書いていないかを含めて考えなくては、

と自分を戒めた次第です。

ダニエル・ピンクの書も、三橋さんの記事も、ちょっとでも「売れない売り込み」を

していると感じる方におすすめです。ぜひ読んでみてください。以上、OS Xエルキャ

ピタンやアップルTVの特集等々、分厚い号の校了が明日朝に迫っていてあまり多くの

ことを売り込めない私の、受け売りのコラムでした。