ライ麦畑で
「わたしはスコアをつけないので……」
Kさんはスタートホールで同伴競技者を見渡しながら言った。
「オナーが分かりにくいかも知れませんが、私が一番飛ばないと思いますから、進行を考えて特例で一番先に打たせてください」
誰からも異論は出なかった。
私は、Kさんが私の年齢だった20年前を知っていた。ギラギラした人だった。たくさんのメンバーコースの会員であることを自慢し、毎日、違うコースに行って1周するのに3週間掛かると豪語していた(実際、それは誇張ではなかったが)。