武士は食わねど高楊枝
私の母は幼い私に口癖のように「武士は食わねど高楊枝」と言い続けた。
武士は貧しくてご飯が満足に食べられなくも、あたかも食事をしたように高楊枝を使う。それが武士の気位であると、母は私に我慢することを教えた。
母の実家は、昭和初期までは有名な青果卸の豪商だった。明治の初期、江戸っ子は将軍の為に最後まで戦った会津武士に同情し、色々な形で支援をしたというが、母の実家は、会津藩士の娘をお嫁にもらうことで、江戸っ子の心意気を実証しようとした。それが、母の祖母、私の曾おばあちゃんだ。