遺言「18番グリーンに」 中編
Kさんの奥さんは私たちに分かるほど大きな溜息をついた。Kさんがゴルフに注いだ情熱のエネルギーと同じ量、家族との関係は冷えていったと聞いていたが、死んでまでゴルフという憎むべき遊びに翻弄されることへの恨みが、その溜息には込められていた。
息子さんが重い空気に合わせるように唸るような声で話した。
「父の遺言を無視しようとも考えました。何で最後までゴルフなんだと思いました。それを頼める家族がいないなんて、嫌みなことも書いているし、無視したって誰も文句は言わないでしょうし」