【第3回】貪欲 | マイナビブックス

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ゴルフプラネット 第17巻

【第3回】貪欲

2016.08.24 | 篠原嗣典

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貪欲

 

 今年のゴルフのテーマは『貪欲』なのである。

 

 仏教では(私は特に熱心な仏教とではなく、知識として知っている範囲ではあるが)人間の基本的な10の罪悪を十悪と言う。殺生、偸盗(ちゅうとう・盗みの意味)、邪淫(不倫他、異常な性行為)、盲語(うそ)、綺語(きご・言葉巧みに偽りを飾ること)、両舌(二枚舌)、悪口、瞋恚(しんい・憎悪)、邪見(誤った見解)、貪欲が、10の内訳だ。

 

 人間の罪悪のベスト10に入るような貪欲、つまりは、止めどない欲望を抑えることは、ゴルフにとってプラスになるのは常識である。淡々と出来ることを確実に実行するようなゴルフは、強い。

 

 しかし、強いて欲望を無視するだけでなく、一つ一つ真っ直ぐに向き合おう、と今年は思うのだ。

 

 昨年はオヤジゴルフの完成というテーマに取り組み、結果として、それはそれなりに成功したと思っているが、それは、禁欲ゴルフを徹底することで初めて出来る壁の上から、欲深さ故に悶え苦しむゴルファーを見下ろして、フフフと微笑むという快感を味わうもので、現実的には、快感というより物足りなさの方が心の中で大きくなっていくのである。

 

 また、ゴルフの神様は嫌みなことで私を揺さぶった。何年かぶりのハーフ4バーディや連続バーディが、特に苦労せずにスコアカードに書くことがあった。何も苦労せずに、また、特に思うところがなくそういう良い結果が出るのは、間違いなく神様が気まぐれにくださる『まぐれ』であることは十分に知っている。でも、『まぐれ』も実力の内と信じたいのがゴルファーのサガである。

 

 今までのゴルフ歴の中で、意図的にバーディを狙ったり、計算したりするゴルフを私はしたことがない。一つには、競技ゴルフの現役だった頃は予選レベルではアンダーは必要がなかったし、バーディを計算したゴルフは、ハイリスク・ハイリターンの見本のように、失敗した時のスコアの下限が大きく下がることは避けられなかった。バーディは、狙って取るものではなく、自然と待っていれば出るものと思うようにしていた。

 

 今年は、ハイリスク・ハイリターンと分かっていても、進んで全ホールをバーディでプレーするようなゴルフをするのだ!

 

 思うだけでは何も始まらない。それに必要な要素は、ある意味で究極のゴルフをする為の手段である。パー5をパー4に変えてしまうような圧倒的な飛距離。狙った所に、思うようなスピンで落とせるアイアンショット。チップインを狙えるアプローチ。狙った方向と距離にあるカップに入るパット。もちろん、それには、スイングの再チェックから用具の変更まで、あらゆる点において妥協は許されない。

 

 面白くなってきた! 貪欲に、飛ばしたい、寄せたい、入れたい! 思うまま求めてみれば、何とも、清々しいのである。

 

 たとえ地獄に堕ちようと、自分の中で完全燃焼するゴルフがしたい。貪欲の根元は、ゴルフへの熱い気持ちなのである。

(2004年1月27日)

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