【第1回】まえがき/連鎖 | マイナビブックス

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ゴルフプラネット 第17巻

【第1回】まえがき/連鎖

2016.08.04 | 篠原嗣典

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まえがき

 

 17巻は、ゴルフにかんしての喜怒哀楽をテーマにして2004年に書かれたものです。

 

 2004年はアテネオリンピックがありました。オリンピック年は、ゴルフルールの大きな改正をする年です。

 

 この年のゴルフルールの大改正で、エチケットに違反した者をどう処罰できるかが初めて明記されました。それまでの数百年間は、暗にゴルフをする資格がない者として哀れむという雰囲気だけで、罰則は明記してきませんでしたから、まさに大改革でした。

 わからない人は、ルールブックを買ってエチケットを読むか、日本ゴルフ協会のホームページでもエチケットは読めますので、確認してください。自分で探して読む方が、記憶に確実に刻みやすいですから。

 

 次元の蟻の話が出てきますが、ゴルフでは特に知っておきたい概念です。平面しかわからない2次元の蟻は、前と横の平面だけではなく、上や下にも行ける3次元の蟻が見えないことがある、ということなのです。次元というレベルは、見下ろすことはできても、見上げることはできないのです。

 レベルが違うとわからないことがあることを自覚しないと、損をするということなのです。Golf Planetは、そういう意味で、次のレベルのヒントや説明をすることでイメージできるような手助けになりたいと願って書いています。

 

  日常の何気ないやり取りの中にもゴルファーとしての価値観が出てくることは、あまり幸せではないという説もあります。

 17巻では、そういうシーンがいくつか出てきて……幸せだと感じたと書いています。

 2004年は一昔に近い昔のことですけど、ゴルファーの心の動きは劣化はしないのだということがわかってもらえると嬉しいです。

(2013年8月)

 

連鎖

 

 その読者は、会社のアドレス故に返信無用でお願いします、と書いてきた。

 

 そういう読者は少なくない。彼が特殊だったのは、2004年のルールブックを45冊も周囲の人々に売っているということだった。

 

 啓蒙して、数冊を周囲の人に配っている人やコンペの賞品にしている人などは今までもいたが、これだけの数となると尋常ではない。

 

 彼はあるゴルフ場の職員だ。ゴルフ場の職員なら当たり前と考える人もいるだろうが、実は、ゴルフの仕事をしている人ほどゴルファーとして正しいという理由で行動するのが難しいものなのであり、これは大変なことだと想像できるのである。

 

 ゴルフ場に就職した彼は、初めは世間のマイナスイメージや日々の仕事にウンザリしていたらしいが、徐々にそういう感情がやる気に変わっていき、今では、ゴルフの楽しさや素晴らしさを出来る限りの人に伝えたいと思うまでになったという。いくつかのコンペを主催し、その名簿に連なる総数は200名というのだから恐れ入る。

 

 そのきっかけになったのが、なんとGolf Planetだというのである。気分の良い連鎖である。こういうメールは、本当に感激してしまう。

 

 昨年末に大先輩から「インターネットでお前がやっていることは、完全に無駄で、都合の良い所だけを理解したフリをした輩をより増長させている可能性を考えれば、むしろ悪い影響を与えているのではないか」と注意を受けた。

 

 思い当たることがあった。昨年は、過去最高に読者とのラウンドが多かったが、5人に1人は『本当に読者なのか?』と思えるほどのエチケット無視や、何度も誌面に書いているにも関わらず、やってはいけない行為を平気でするという現象に戸惑った。ラウンド中に注意すると、周囲の人も迷惑だし、私もその後に気力を維持するのに苦労するから、ラウンド後にメールを書いたりすることになる。読んだだけで出来るという人は少数派なのかもしれない。昨年の反省点だった。

 

 そういうような事情があっただけに、全く会ったことのないゴルファーが同じ気持ちで行動していることを知り、今年も頑張ろうという思いが一段と強くなった。

 

 このメールは元旦に届いた。何だか良い1年が始まりそうだと、一瞬でも思えれば、それはかなり幸せなことだと思う。そういうささやかな幸せをくれるメールだった。

(2004年1月6日)

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